ボクシングWBC世界バンタム級1位・那須川天心は、なんとか「世界前哨戦」を3-0の判定勝ちでクリアしたが、決定打に欠ける、煮え切らない試合展開だった。
6月8日のバンタム級10回戦で対戦したのは、WBA同級6位ビクトル・サンティリャン。内容では圧倒したがKOはできず、相手のパンチを被弾する場面が目立った。
試合後の会見で那須川は、こう話している。
「やっぱり倒して勝てるのが理想的。もっと鮮やかに勝ったり、倒しもしたかった。もう一個、先の景色を見たい。もっと自分を破壊するしかないと思う。ロックな男になります」
世界タイトル挑戦に向けて、殻を破ることを宣言した。
これでボクシングは7戦無敗となり、キックボクシング、総合格闘技の戦績と合わせて53戦負けなし。依然として「格闘技無敗」の肩書を背負っているが、世界タイトル戦となれば、どうなるのだろう。
現在、バンタム級では誰が世界戦の相手になっても、王者は全て日本人。WBCとIBFはこの日のメインイベントで、文字通り相手の西田凌佑を破壊して31連勝を飾った中谷潤人。WBAは目の手術を受けて休養王者となっている堤聖也だ。そしてWBOはK-1王者からボクシングに転向して世界王者となった武居由樹。堤は時期的に試合は難しい状況とみられ、中谷が相手では現状、勝ち目はない。武居との世界戦は現実的だろう。
「那須川はK-1のライバル団体RISEのエースとして長年、君臨。2022年6月の、K-1とRISEの対抗戦となったビッグイベント『THE MATCH』で、当時K-1のエースだった武尊に勝った。そんな因縁もあるだけに、武居戦は盛り上がりそうですが、武居はK-1時代から強打のパンチを武器にしていた。それがボクシングでも通用しています。那須川が屈する場面は、十分に想像できます」(格闘技関係者)
ちなみに中谷は今回の勝利を最後にスーパーバンタム級に階級を上げることが濃厚であり、王座を返上すればWBCとIBFは空位となる。となれば、その王座決定戦に挑むというのが、最も「安全」なのかもしれないが…。
那須川に最大の試練が訪れるかもしれない。
(高木光一)