社会

函館市が「政務活動費削減NO1」を達成した理由

“号泣議員”こと野々村竜太郎元兵庫県議会議員の騒動以降、あちらこちらの地方自治体の議会で不適切な使い方が問題となっている政務活動費。その先例として注目されているのが、北海道・函館市の取り組みだ。

 地方自治体法では、政務活動費の使途について「議員の調査研究その他の活動に資するための経費の一部」と定められている。主な内訳としては、事務所費やスタッフの人件費、会報の発行やホームページの運営にかかる広報費などがあげられる。

「金額は議会ごとに定められています。月額では、東京都の60万円を筆頭に道府県や政令市では20万~30万円、市町村では1万~10万円程度が多いですね」(全国紙政治部記者)

 政務活動費の交付を受けた議員または会派は、年度ごとに報告書を提出することになっており、議会事務局に行けば誰でも閲覧することができる。ほとんどの議会では、報告書には領収書の添付を義務づけているが、交通費などの例外を認めているケースも多い。

 また、報告書は閲覧できても領収書は非公開という議会もあり、情報公開のあり方は以前から問われてきたのだ。

 昨年度、「政務活動費の透明度ランキング」で1位に輝いた北海道函館市議会では、11年度から収支報告書だけでなく領収書もインターネットで開示している。さらに、視察先でどのような調査を行ったかなど、細かい報告もネット開示の対象となっている。

 支給された政務活動費のうち議員が実際に使った金額の割合を執行率というが、函館市議会の昨年度の執行率は53.2%。47都道府県の平均は92.7%。単純に低ければいいというわけではないが、少なくとも「ムダづかい」防止の効果は見て取れる。道南市民オンブズマンの大河内憲司代表が解説する。

「ネット開示を導入する前までは、函館市議会の執行率も平均して90%くらいありました。誰が見ても不適切と思える支出も少なくありませんでした」

 過去には、不適切な支出がいくつもあった。例えば、「ホテルに宿泊したと申告していながら実際は親族の家に泊まっていた」「市政と関係ないレジャー施設に頻繁に立ち寄っていた」「モノレール建設の予定などないのに沖縄県のモノレールを視察に行った」など枚挙にいとまがない。

 日常化していた議員のムダづかいに疑問を持った函館市民が、オンブズマンを中心にして政務活動費(当時は調査費)の返還訴訟を起こしたのが04年。以後08年までに3回の訴訟を起こし、いずれも裁判所は市民側の主張を認めた。

 当初は訴えられた側の議員が会見で「市民はケチくさい」などと発言することもあった。しかし、実質敗訴という結果が続くようになって、徐々に意識が変わっていき、それがネット開示へとつながっていった。

 だが、函館と同様にネット開示を実施していても、例えば長野県議会のように執行率99.5%と、開示との相関関係を否定するデータもある。前出・大河内代表は自身の経験を踏まえてこう指摘する。

「ネット開示の制度だけでは不十分。議員側に『市民から厳しく監視されている』という意識を持たせないと効果は上がらないと思います」

 政務活動費が本来の目的どおりに使われるためには、厳格なルールと市民のチェックが必要なようだ。前出・政治部記者が言う。

「それでも47都道府県のうち5県が、1万円以下の支出では領収書は不要としている。インターネット開示も市町村レベルでは一部ですでに実施されている。そういう点でも、都道府県の現状は遅れていますね」

 函館市の取り組みに戦々恐々とする地方議員も多いことだろう。

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