モータースポーツ界の暴れん坊が、またトラブルを起こした。
大分県のオートポリスで5月18日に開催された、全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。女子大生レーサーのJUJUこと野田樹潤は、ホームストレート手前のシケイン入り口付近で、後続トップ集団への追い抜きを促す「青旗」が振られたにもかかわらず、JUJUはインをかたく守り、追い抜きを食い止めた。
SFGo(全ドライバー情報視聴システム)には、父でチーム代表兼監督の野田英樹氏の無線が残る。
「ルール上、タイヤ交換していない者への青旗義務はない。だが、無線で言われているから譲れ。こんなのレースじゃない」
さらに英語を交えながら、こう諭した。
「JUJU、これは政治だ。チームオーナーを考えろ」
JUJUは2025年から、新設チームHAZAMA ANDO Triple Tree Racingに所属。一方、スーパーフォーミュラの主催団体JRPの会長は近藤真彦であり、近藤はそれに加え、KONDO RACINGのオーナー兼監督でもある。英樹氏の言う「政治」とは、レースの裁定が現場のパフォーマンスだけでなく、JRP会長の影響力によって左右される可能性を指したものだ。
翌日、3位表彰台の山下健太(KONDO RACING所属)は、Xで苦言を綴っている。
〈昨日のレース、許せない無線を聞いたので、そろそろ良く考えた方が良いんじゃないかなと思いますね。誰とは言わないけど〉
父娘コンビへの視線は、一段と厳しさを増すことになったのである。
この騒動を語るには、やはり「親子鷹」としての関係性が不可欠だ。元F1ドライバーで国際レース経験が豊富な英樹氏は、幼いJUJUをサーキットへ連れ出し、ドライビングだけでなく勝負勘や精神面も鍛えてきた。しかし公私の境界が曖昧になりやすく、過剰な擁護や感情的な抗議で、たびたび物議を醸している。
昨年5月のレースでは、優勝争い中にスピンしてリタイヤ。マシンを降りたJUJUは不甲斐ない自分に腹が立ったのか、借り物のステアリングホイールをコース上に叩きつけ、無断でコースを横断。その「激情事件」はセッション中断を招き、「プロとしての冷静さが足りない」と厳しい声が上がった。幼少期から負けず嫌いの性格が災いした結果だと言われている。
モータースポーツ界で、若い女性がトップカテゴリーを戦う例は稀。親子コンビで挑むJUJUの存在感は大きく、昨年のデビュー以降の連続完走は14戦を数える。しかしその裏では、終盤にフラフラと進路を変え、他車の追い抜きを妨ぐブロック走行が散見されるなど、「まずは技術を磨いてから」と注文がついている。
今回の「青旗無視」事件を受けて、レース運営は青旗対応と、運営、ドライバー、チーム間のコミュニケーション改善が急務としている。自らの激情でレースの流れを変え続けるJUJU親子。次戦では期待と厳しい声援を背中に受けつつ、技術とメンタル両面で真価が問われるだろう。
(ケン高田)