メジャーリーグ挑戦1年目の菅野智之に、風雲急を告げる事態が降りかかっている。
5月21日(日本時間22日)のブリュワーズ戦では6回5安打1四球3奪三振で2失点。88球を投げ、安定感のあるクォリティースタートを記録した。しかし味方打線の援護なく、勝敗はつかず。防御率は3.07となり、チーム最多の4勝である。
所属するボルティモア・オリオールズは現在、ア・リーグ東地区のぶっちぎり最下位に沈む。ポストシーズン進出は、ほぼ絶望的だ。
そんな中、地元紙では「菅野のトレード話」が連日のように報じられ、シーズン途中の積極的補強と放出で知られるエリアスGMの手腕から、今夏「売り手」に回る可能性が高まっている。シーズン中の浮上を諦めたチームが来季以降に向けて「主力を放出して有望な若手を複数獲得する」というトレードである。菅野がそのターゲットになっているというのだが…。
移籍先候補として有力視されるのは、ドジャースとカブスなのだという。ドジャースは地区4連覇を狙う中、クリス・カーショウが左膝半月板と左母趾手術の影響で復帰直後、イニング制限が続く。トニー・ゴンソリンも開幕直後に背中痛で15日間IL(故障者リスト)入り。復帰後は親指水ぶくれによるトラブルに見舞われ、先発ローテの安定性に不安を残ている。
菅野の「緻密な投球管理」「要所での強心臓」は、ポストシーズン短期決戦を見据えるドジャースの補強ポイントと合致し、若手投手陣への技術アドバイス力も大きな魅力だ。
カブスは2021年シーズン以降、プレーオフ進出から遠ざかっており、再浮上を目指す中で先発強化を急務とする。今永昇太が左大腿部肉離れで戦列を離れ、復帰は6月下旬が見込まれている。年俸1300万ドル(約19億5000万円)の菅野は、チームが求める「シーズンを通して150イニング以上を投げ切れる、信頼性の高い先発投手」として、コストパフォーマンス面でも重宝される。
7月31日のトレード期限に向けて、オリオールズ球団フロントは若手有望株確保の名目で、エース格先発投手を放出する覚悟を固めつつある。ドジャース、カブス両球団が、将来を担うであろう若手選手を差し出してまで、菅野を獲りにいくのか。水面下での駆け引きがまさに、動き出そうとしている。
(ケン高田)