「本命」は菅野智之ではなかった。
ア・リーグ東地区のボルディモア・オリオールズは序盤戦から負けが込み、最下位に沈んだまま。そのため主力選手を売りに出し、来季以降に備えるシーズン途中の改造劇「フラッグディール・トレード」の注目チームとされている。
これはチーム再建に必要なトッププロスペクト(若手の有望株)を獲得するトレードで、メジャーリーグの恒例行事となっている。トレード期日はアメリカ東部時間7月31日午後6時。
「オリオールズ戦のスタンドで、他球団スカウトの目撃情報がありました」(現地記者)
トッププロスペクトを獲得するには、チームの勝ち頭である菅野を放出するしかない。そんな一報が日本に流れてきた。しかし、フラッグディール・トレードに関する現地情報を集めてみたら、他球団が狙っているオリオールズ投手の本命は、菅野ではなかったことがわかる。狙いはクローザーに返り咲いた、フィリックス・バティスタだったのだ。メジャー関係者が語る。
「一昨年10月にトミー・ジョン手術を受け、昨季は全休。今季に復帰し、序盤戦は打ち込まれたものの、徐々に剛速球が蘇ってきました。低めのストライクゾーンからストンと落ちるスプリットに定評があり、高低で勝負するタイプです」
地区優勝を争うチームの傾向としては、「ブルペン層を厚くしたい」との考えが大きい。レッドソックス(ア・リーグ東地区5位)の救援陣もフラッグディール・トレードの標的にされていた。5月半ばから負けが込み、勝率は5割を切っている。その放出一番手に挙げられているのが、剛腕アロルディス・チャップマンだ。
「今季37歳で、速球に往年のスピードはありません。私生活ではDV事件などスキャンダル続きで、昨季はパイレーツで苦しんでいました。今は変化球の割合を増やし、直球を速く見せるテクニックを習得しています」(現地ジャーナリスト)
いわばレッドソックスで蘇ったというわけだが、名門球団が「スキャンダル歴のあるベテラン」を獲ったということは「改心した。二度と事件は起こさない」と確信できたからだろう。
先発投手より、まずはブルペン層の強化。菅野自身はオリオールズとの契約を全うしたいと考えているそうだ。菅野放出の可能性がゼロになったとは言わないが、現地では日本ほどの騒ぎになっていない。
(飯山満/スポーツライター)