アメリカのトランプ大統領が記者団を前に衝撃発言をブチ上げたのは、オランダで開かれるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席するため、大統領専用機エアフォースワンに乗り込む少し前のことだった。
自らが仲介した停戦合意の直後、イスラエルとイランがミサイル攻撃による報復合戦を臆面もなく繰り広げたことに激怒すると、ホワイトハウスの前庭に待機させていた大統領専用ヘリ、マリーンワンを横目に、あろうことか、禁断の「放送禁止用語」まで交えて次のように両国を罵倒してみせたのだ。
「They don’t know what the fuck they’re doing!(ヤツらはテメーらが何をしでかしているのか全く理解していない!)
ここに登場する「fuck」はご存じのように、アメリカで放送禁止用語とされている卑語。激しい侮辱や嫌悪の感情を表する際に使用される禁断のスラングであり、2カ所に登場する「they」がイスラエルとイランを指していることは言うまでもない。
とりわけイスラエルに対する怒りには、すさまじいものがあった。アメリカとは同盟関係にあるだけに「裏切られた」との思いをいっそう強くしたようで、禁断発言の直前、トランプ大統領は自身のソーシャルメディアを使って、次のように警告を発していたのである。
「イスラエルよ、爆弾を落とすな。操縦士たちを帰還させろ、直ちにだ!」
それにしても、である。トランプ大統領はなぜこれほどまでに怒りを爆発させ、両国を口汚く罵ったのか。全国紙外信部記者が明かす。
「トランプ大統領が喉から手が出るほど欲しがっているのは『ノーベル平和賞』です。いわゆる『力による平和』を成し遂げた功労者として、歴史に名を残す。その野望の邪魔をするイスラエルとイランの行動は、絶対に許せなかったのでしょう」
しかし、停戦合意の行方はいまだ不透明。加えてイスラエルとガザの紛争、ロシアとウクライナの戦争にも、解決の見通しは全く立っていない。
望めば望むほど、ノーベル平和賞は遠ざかっていく。これが偽らざる現実なのである。
(石森巌)