セ・パ交流戦最後の試合となったロッテ×巨人の結果を受けて、4-6で敗北した巨人は6勝11敗1分で、11位フィニッシュとなった。
甲斐拓也は2安打を放ったにもかかわらず、ベンチでひとりうつむき、涙をにじませた。これまで控えに回ることが多かった先輩捕手・小林誠司がそっと肩に手を置き、声をかけるシーンが見られたのである。
甲斐が深く落ち込む背景には、先発マスクをかぶった交流戦7試合すべてでチームが敗れたという、厳しい現実がある。勝利への貢献が果たせないまま続いた重圧が、あの涙につながったのだろう。
とはいえ、ここまで甲斐にも輝く瞬間はあった。4月22日の中日戦(東京ドーム)では、先発登板した井上温大が自己最多タイとなる14奪三振を記録(球団左腕タイ記録)し、甲斐の配球がその快投を支えた。
5月23日のヤクルト戦(東京ドーム)では、赤星優志がプロ初完封勝利をマーク。被安打7、無四球、5奪三振という内容を締めくくったのは、甲斐の的確なリードだった。
では小林はどうか。6月20日の西武戦(東京ドーム)で、小林が今季初スタメンマスクを託されると、西武打線を1得点に封じる好リード。打っては6回に決勝の中前適時打を放ち、巨人の勝利に寄与した。
阿部慎之助監督はチームに新たな刺激を与えるべく、これまで主に甲斐がリードを支えてきた赤星とのバッテリー起用にひと区切りをつけ、小林との新バッテリーを選択する大胆な采配を選択した。
阿部監督は試合後にこう言っている。
「みんなが甲斐をいじめるからさ。大量失点になるとかさ。そういう時もあるんだよ、キャッチャーは」
甲斐に対する思いやりのようにも聞こえるが、自身が先発を外された試合ばかりで勝利したのだから、本人にとってはキツイ言葉だったに違いない。
開幕直後こそもてはやされ、重宝された甲斐だが、昨年までの大量データを持っているはずのパ・リーグ打線相手に結果を出せなかったのだから、屈辱的だろう。
交流戦の経験は、甲斐にとって大きな試練でもあった。しかし、これまでの好リード実績や打撃での意地は、リーグ戦再開後に本来の力を取り戻す下地となる。大型移籍男の奮起に期待したい。
(ケン高田)