プロ野球にも夏風邪のような「急ブレーキ」はある。巨人の「ロマン砲」リチャードは、26歳の誕生日を迎えた6月18日のイースタン・リーグ、ロッテ戦に「4番・DH」として先発出場。4打席連続で空振り三振を喫した。
打撃不振にサイン見落としが決定打となり、6月13日に1軍登録を抹消され、2軍で調整中。とはいえ、4試合連続のスタメン起用にもかかわらず、打率は1割4分3厘、0本塁打、3打点、5三振、OPS.414という数字が示すのは、期待を大きく裏切る苦しい現実だった。
リチャードはソフトバンク時代、ウエスタン・リーグで5年連続本塁打王となり、2022年にはリーグ記録の29本塁打をマークした。2軍での無双ぶりが巨人移籍の一因となっただけに、この惨状はいったい…。
野球解説者のデーブ大久保氏がリチャードの移籍直後に分析した、スイングに潜む課題と可能性への言及が興味深い。
デーブ氏はリチャードのバッティングについて、
「ワンレッグ・ステップゆえに、右足の支えが不十分になるため、バランスを崩しやすい」
問題点を指摘した上で、こうも言った。
「足を高く上げた瞬間の動き出しは速く、スピードを生かせれば1軍でもホームラン争いが可能」
素材としての爆発力を評価したのである。
練習量について「汗をかいていないのでは」との声があることに触れると、
「巨人軍の厳格なチーム文化が、彼の人間性とプロ意識を磨くはずだ」
環境の変化がリチャードを成長させると期待を寄せた。
交換要員としてソフトバンクへ移籍した秋広優人は6月14日のDeNA戦で早くも本塁打を放ち、打率2割5分、1本塁打、4打点とまずまずの成績を残している。秋広の順応ぶりが際立つほど、リチャードの苦戦がクローズアップされる構図だ。
期待と現実のギャップに対する巨人ファンの視線は厳しい。だがデーブ氏の言葉が示すように、今後の練習環境と調整次第で、リチャードが爆発する可能性は否定できない。
「野球にもクーリングオフを」などという声がある中、リチャードが2軍でどのように修整を重ね、再び豪快な一発を見せてくれるのか。
(ケン高田)