低迷著しい球団の指揮官はしばしば、任期半ばでの「シーズン途中休養」に追い込まれることがある。今季のプロ野球でそんな事態が取り沙汰されていたのが、ヤクルトの高津臣吾監督だ。
だが6月25日のヤクルト本社株主総会では、林田哲哉球団社長オーナー代行が、監督人事について次のように言及した。
「一蓮托生。残った78ゲーム、本当に監督の手腕もあれば、選手が持っている能力を全て引き出してほしい。最後まで務めてもらうつもりです。『歯を食いしばって頑張ってほしい』と伝えています」
事実上の今季続投宣言である。さらにメジャーリーグ移籍を目指す村上宗隆のポスティングシステム申請については、
「海外に行きたいと言ったならば、申請してあげようと思う。村上君に大成してほしいのが我々の思い。MLB各球団がどんな評価を出してくるかで村上君は考えるでしょうが、我々はサポートしたい」
寛容な姿勢を示すと、指揮官と主力に対する信頼と期待を併せて強調したのである。
高津監督は就任6年目。2年連続リーグ優勝の実績を誇るものの、ここ数年はBクラスが続いており、現在もぶっちぎりの最下位に沈んでいる。そして今季の交流戦は、5勝12敗1分の最下位。観客動員数は25万2724人に達したものの、動員率90.67%はリーグワーストだ。
球場に広がる失望感は隠しようもなく、西武の松井稼頭央前監督が昨年5月、首位ソフトバンクに15.5ゲーム差をつけられ、借金15で休養した例があることから「もう休ませてやれ」という声が聞こえてくるのは当然だろう。
株主総会では「高津監督の背番号22を永久欠番にする検討は?」という提案も飛び出したが、「今、それを言うか」だ。
仮にこのまま浮上せずシーズンを終えた場合、高津監督の去就問題はオフの重要事項となる。 そこで思い出されるのが、昨年10月に退任記者会見を開いた、オリックスの中嶋聡前監督だ。
「今まで通りやっていても、人って慣れる。慣れの方が今年はより強く出てしまった」
就任して即3年連続優勝に導いた名将がその際に吐露した、素直な心境がこれだ。勝者ゆえの、慣れへの危機感。優勝から一転して5位に沈んだ責任を取り、自らユニフォームを脱いだが、その潔さは球界に深く刻まれた。
ヤクルトの来季監督人事をめぐっては内部昇格のほか、青木宣親氏や宮本慎也氏らOBの名前が取り沙汰されているが、今のチーム状態では「貧乏くじ」の色が濃い。
リーグ2連覇という栄光の後、チームは低迷期にどっぷりとハマッている。残り78試合は、指揮官の意地と選手の奮起が問われる正念場。どんな答えを示すのか、興味深い。
(ケン高田)