スライダーはあの伊藤智仁のような鋭さを持っているのに、それが災いして入団1年目から右ヒジの炎症に苦しんだ。今季の開幕投手まで担ったヤクルトの奥川恭伸が、2軍での調整を強いられている。
高津臣吾監督が2軍落ちを命じたのは、5月3日の阪神戦で打ち込まれた後だった。
「改善してきてほしいところはいっぱいある。細かなところで全くできていないところもある。チームの勝ちにつながる、大事な先発投手が週に1回投げるということを目標にしてほしい」
なにしろ5回1/3を10安打6失点と、火だるまになって降板。ここまで5試合で0勝3敗、防御率5.61だった。ストレートは150キロを超えるものの、シュート回転して力が感じられない。奥川自身も「投げていても、しっくりきていない」と周囲に悩みを打ち明けているようで、感覚を戻すのが2軍での仕事となる。
右ヒジが悪化した3年目に5つの病院を回り、トミー・ジョン手術を検討したことがある。ところがスポーツ医学に詳しくない医師から「メスを入れるのは最後にした方がいい」と保存療法を薦められ、これを選択してしまった。
「遠回りとなってしまったのは、この選択ミスがあったから。現代野球の投手において、トミー・ジョン手術はもはや普通のこと。医学が進歩しているので、ヒジ痛を完治させられます。あの大谷翔平も2度、トミー・ジョン手術を受けているほど。奥川は右ヒジをかばうような投げ方になり、スライダーの曲がりが小さい。今からでも遅くないので、きちんと手術をして完璧な腕になってから戦ってもいいのでは」(スポーツジャーナリスト)
2021年にチームトップの9勝を記録して、優勝に大きく貢献した奥川。はたして復活できるのだろうか。
(佐藤実)