ボクシングの本場ラスベガスで「モンスター」ぶりを世界に知らしめた世界スーパーバンタム級4団体王者の井上尚弥(大橋ジム)だが、そのWBA同級1位ラモン・カルデナス(メキシコ)との対戦では、キャリア2度目となるダウンを喫している。2回に左フックを被弾してのものだが、昨年5月のルイス・ネリ戦で食らった左と、まるで同じ軌道のパンチだった。
結果的に8回TKO勝利を収めたものの、大橋秀行会長が「心臓が止まるかと思った」というダウンと、スリリングすぎる攻防。元WBA世界ライトフライ級王者・渡嘉敷勝男氏は、自身のYouTubeチャンネル〈「渡嘉敷勝男公式」トカちゃんねる〉で試合を振り返り、井上の被弾を独自分析した。
「井上チャンピオンの、何か動きが鈍いなっていうのは感じたんですよね。井上チャンピオンの場合は、3カ月に1回という過酷な防衛戦を積み重ねていますよね。いくら早く倒したといえども、それまでの練習がものすごい時間をかけてやってますから、肉体的には疲労してるんですね。そして井上チャンピオンはすぐ次の日から、軽い練習をやり出したりしています。あれはよくない」
その上で、さらに踏み込んだ。
「いくら研究されてても、パンチを避けられないはずがない。井上チャンピオンの勘だったら、ネリのパンチも避けられたはず。なのに、もらってる。見えなくても避けるのが勘ですから。井上チャンピオンの場合、破格の勘を持ってます。それが薄れてきてるというのは年齢ではなく、おそらく疲れです」
この試合で井上は、世界戦の通算KO勝利が23となり、歴代最多を更新。ジョー・ルイス(アメリカ)の22KOを77年ぶりに塗り替えた。
井上がダウンを喫したカルデナスの一撃は、相手陣営の研究の賜物とされる。井上の加齢や、階級の限界説が囁かれているのも事実だ。
ただ、渡嘉敷氏が言うように、単なる疲労であるならば、それを取り除けば「モンスター」はさらに最強の道を歩むことになる。
(所ひで/ユーチューブライター)