「いわゆる魚雷バット」に関する各球団の監督や選手の評価はマチマチだ。仮にそれで本塁打が出たとしても、辛口なコメントを発するケースがある。それが5月6日のオリックス戦での、清宮幸太郎の打撃にまつわるものだった。
魚雷バットを手にした清宮は、16試合58打席ぶりの本塁打を放った。打った本人は、
「バットがめっちゃ出てきます。重さも長さも打つポイントも同じ。気持ち新たにいけて、よかったです」
そう振り返って満足げだったが、新庄剛志監督の気持ちは複雑だった。
「清宮君は魚雷バットを使って打ったってことは、差し込まれているんですよね。だから打ち方としてはよくないよね。使ったことないから、わからないけど。結果が出たから」
まずはいい結果を出したことで、辛口ながら寛容な物言いではあったのだが…。
魚雷バットは一般的なバットよりもバレルが手元に寄り、先端部が細く絞られている独特の形状を持つ。これによりバットの重心が手元側に移動し、スイングスピードが上がる一方で、ボールを捉える「芯」が通常の位置よりもズレる。新庄監督はこの特性について、
「芯の位置が違うから、素直に当てたいバッターには向かない」
技術と道具のギャップを冷静に分析しているのだった。
日本ハムで実際に魚雷バットを試した松本剛はこれまで、目立った成果を得られていない。まずは4月15日と16日のロッテ戦で試打し、いきなり左前打を放ったものの、ミートポイントのズレから内角球には対応できず、打率を向上させるには至っていない。これは魚雷バットが万能ではないことを証明するとともに、技術力の差が露呈する形となった。
中日OBで元スラッガーの山﨑武司氏は、こんな意見を持っている。
「詰まり気味の打球でも、ホームランが可能なバット。非力なバッターには追い風になる可能性はある。僕が現役だったら使わない」
魚雷バットには向き不向きがあることを指摘しているのだが、新庄監督もその点は同意見であり、
「芯に当てるうまいバッターは、魚雷バットを使う必要はない」
技術面にリスクが発生することを懸念しているのだ。「結果が出れば」と、今のところは魚雷バットの使用に寛容な姿勢を見せているが、成績が伴わなければ使用禁止令が出たり…。
新庄監督のマネージメントは一見「結果至上主義」に映るが、その一方で長期的なチーム作りにおいては、プロセスや選手の成長を重視する柔軟さがある。シーズン当初から一向に調子が上がらなかった清宮だが、結果を出す限りは、新庄監督も静観するつもりなのだろう。
(ケン高田)