〈勝負事での〝嫌な予感″は現実になる場合が多い〉
野球解説者の上原浩治氏がスポーツ紙のコラムで指摘したのは、巨人の主砲・岡本和真の左ヒジ負傷と長期離脱が的中した、ということだったのだろう。
ゴールデンウイーク最終日、東京ドームでの阪神戦。それは初回無死一塁の場面で訪れた。阪神・中野拓夢の送りバントが三塁線に転がると、三塁手でスタメン出場したルーキー・浦田俊輔の送球が右に逸れる。これを捕球しようとした岡本が、走り込んできた中野と交錯し、左ヒジを負傷したのだ。岡本は腕を押さえて苦悶の表情を浮かべ、グラウンドに転がった。
浦田はもともと遊撃手だが、ポジションを固定せず、多彩な守備をこなす中での不慣れな動きと送球の軌道が事故につながった格好だ。
都内病院での検査結果は「左肘の筋損傷」。トレーナーが「時間を要するだろう」とする診断であり、長期離脱は避けられない見込みとなった。
上原氏はこのプレーについて、以下のように論評している。
〈浦田の送球が悪いとはいえ、ルーキーであり本職はショート。仕方ない部分はある。岡本にしても主砲でありながらファースト、サード、レストを守っている。ファーストの経験が不足しているとは言わないが、こういったアクシデントが起きてしまうと、ポジションを固定してなかったことが原因のように思えてしまう。見ている方も「マイナス思考モード」に突入してしまった〉
阿部慎之助監督の起用法を暗に批判した形だが、この日はベテラン・長野久義も阪神・大山悠輔のドライブ気味の飛球をグラブの土手に当てて弾くエラーで、ピンチを広げている。これにも上原氏は、
〈プロとして捕らなければいけない打球ではあるが、運にも見放されているようなイメージに拍車をかける結果になった〉
そうバッサリ斬り捨てたように、確かに守備固め要員がエラーをしているようでは、勝利の女神が巨人に微笑むことはないだろう。これで阪神戦は1勝7敗となり、
〈優勝争いのライバルチームへの「苦手意識」は、ペナントでは致命傷になりかねない〉
と上原氏が大いに懸念するのはもっともだ。
「嫌な予感」というひと言には、単なる予測以上に、巨人が抱える根深い課題への警鐘が込められているようである。
(ケン高田)