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記事全文を読む→年配男性客を刺激する「ハードコア傑作選」B級3作品を見た!/大高宏雄の「映画一直線」
この夏、行き慣れたシネコンを少し離れ、ふだんあまり行かない映画館に3回、赴いた。都内のミニシアター、シネマート新宿だ。「新宿ハードコア傑作選」という洋画の「旧作」上映を見るためである。
タイトルをいえば、順に「ハードコアの夜」「ローリング・サンダー」「キング・オブ・ニューヨーク」となる。1日1回の上映だったが、300席を超えるスクリーンが、いずれも7~8割方、埋まっていた。年配の男性客が多かった。
「ハードコアの夜」(1982年、日本初公開)は「タクシー・ドライバー」の脚本家として知られるポール・シュレイダーが脚本と監督を務めた。失踪した娘を探し回る父親の話である。主演は「パットン大戦車軍団」などのジョージ・C・スコット。
「ローリング・サンダー」(1978年)の監督は、アクションもので知られるジョン・フリンで、シュレイダーが脚本を担当した。ベトナム帰還兵の話で、精神をひどく病んだ男が主人公だ。若きトミー・リー・ジョーンズが帰還兵の一人を演じる。
「キング・オブ・ニューヨーク」(1991年)はアベル・フェラーラが監督し、クリストファー・ウォーケンが代表作「ディア・ハンター」から12年後に主演した作品。ギャングの争いを描く。
「ローリング・サンダー」以外は、初めて見た。3本ともに面白かった。3本はいわゆるB級映画的な作品だと言っていい。
「普通」の生活を送っていた男が苛酷な試練にぶち当たり、それを突破しようとする。自己回復を試みて、自滅の道を歩む場合もある。
そのような作品の輪郭が、わがマインド部分に強烈に攻め入ってくる。長年の映画体験により、それを受け入れる「感性」が染みついているのである。
マインド部分の内実は自身でも明快ではないのだが、映画の面白さのひとつがそこにあると、体が覚えている。監督たちも、そこを狙い撃ちするような作品を送り出すことが多かった。
今の時代では描かれることのない男たちの「生きざま」「死にざま」だろう。「何とかざま」という言い方に、リアリティーとシンパシーがあった時代の話だ。
映画は変わる。だから別段、今の映画と比較して、とやかく言うこともあるまい。特に、すぐにしたくなる「男の映画」云々という文脈は止めておこう。
この夏の猛暑をかいくぐり、シネマート新宿に足を運んだ、自身を含めた年配者がけっこういたという事実を、サラッと書いておきたい。昔は良かったと、ノスタルジーにひたる人もいるかもしれないが、それもいいと思う。ひたっても、映画の変化を強烈に感じているに違いないから。
今年、米アカデミー賞の作品賞を受賞したのに、あまりヒットしなかった「ANORA アノーラ」という映画があった。ストリップダンサー(ストリッパーではない)を主人公にした、B級映画的な作品だ。
男たちの横暴さに抗すべく、体全体で突進力を見せていく女の「生きざま」が強烈だった。冒頭からラストのシーン中心に、官能描写にも手を抜いていない。残念ながら、今の日本映画からは生まれない作品だろう。羨ましかった。
30年後、40年後には「何とか傑作選」として上映されるのではないか。そんな気がする作品だった。
「新宿ハードコア傑作選」は9月4日で終了した。映画館でなくても見られる機会はあると思うので、その時は楽しんでいただきたい。いろいろ考えることもあるだろう。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2025年に34回目を迎えた。
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