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記事全文を読む→宮沢氷魚と岸井ゆきの「夫婦のリアル15年」を活写した「佐藤さんと佐藤さん」監督が語る「家事と育児分担」ガチ問題
ワイドショーの格好のネタになった、あの布団叩き騒音おばさん映画「ミセス・ノイズィ」から6年、天野千尋監督が描くビターなマリッジストーリーが誕生した。甘さだけでも苦さだけでもない日々のリアルを通して投げかけられる「結婚とは?」「誰かと一緒に生きることとは?」という問い。共感や苛立ち、ささやかな希望が同時に押し寄せ、見た後には誰かと語り合いたくなる――。
この作品「佐藤さんと佐藤さん」(配給:ポニーキャニオン)は、宮沢氷魚と岸井ゆきのが「夫婦」として初共演。「佐藤」という同じ苗字の2人の交際、結婚をリアルに表現している。そこでメガホンを執った天野監督を直撃インタビュー!
――夫婦の15年間が描かれた作品ですが、このテーマを企画しようとした経緯を教えて下さい。
天野 私は10年ほど前に結婚、出産し、子育てが始まりましたが、その中で苦しんだ経験や、気付いたことが出発点になっています。当時、子育てのために仕事を中断せざるをえず、夫の稼ぎに頼ってワンオペで家事育児をする生活で、社会から取り残されたような閉塞感を味わいました。外で働く夫が自由で羨ましく、ストレスをぶつけてしまうことが多くありました。そんな私の苦しみは、当時は夫に全く伝わらなかったのですが、数年後に思いがけず伝わる時がきたのです。それは私が仕事に復帰し、家事育児を全て夫に任せて一日中、外で撮影していた時でした。帰宅すると夫が、かつての私のような恨めしそうな目で私を見
ていたのです。その時、女だから男だからではなく、どんな「立場」に立つかで心境も考え方も変わることに気付き、サチ(岸井)とタモツ(宮沢)の物語へと繋がっていきました。
――家事育児と外で働くこと、夫婦間での分担の問題が映画では描かれますが、実生活ではいかがでしょう。
天野 ウチの場合は、最初こそ私が家事育児担当でしたが、このままではまずいと思いました。「私の方が慣れているから」とこの分担を続けたら、私は永遠に仕事に復帰できず、ずっと夫の稼ぎに頼るしかない。慣性の法則みたいな状況を一回、壊さなければ…と思い、面倒だけれど夫と全ての家事育児を共有するようにして、仮に私がいなくても夫だけで全て回せる状況を、早い段階で作りました。おかげで夫と私の双方が「外で働くこと」「家事育児を担うこと」のどちらの立場も経験でき、気持ちを共有しやすくなったんです。とはいえ、私自身も「妻の方がこうあるべき」「母親ならこうすべき」といった固定観念に引っ張られたりして、ずいぶん苦労しましたが。
――そうした「男だから、女だから」「夫だから、妻だから」「父親だから、母親だから」といった古い価値観は、映画の中でも描かれていますね。
天野 そうですね。私が子育てを始めた10年前と比べて、ずいぶん変わってきたように感じますが、まだまだ今の社会には残っていると思います。私自身、結婚して初めて、社会に根強く残るそうした価値観の存在に気が付き、しんどさを感じました。今は過渡期だからこそ、「結婚」や「夫婦」についての様々な価値観が社会にある。その状況そのものを描きたいと思い、いろんな価値観を持ったキャラクターを登場させました。例えばタモツの実家の祖母は「タモツは長男だから帰ってきて家を継ぐべき」と考えていますし、サチのお母さんは「結婚式はやっぱり挙げるべき」と考えています。
――今回の作品で特にこだわった部分はあますか。
天野 2人の関係性や心境がどんどん変化していくので、お芝居だけでなく映像でもそれを表現したいと思いました。カメラマンと相談し、出会ってから子供が生まれるまでの数年間は16ミリフィルムで撮影し、それ以降、2人がすれ違っていく過程はデジタルで撮影しています。前半は仲が良い2人の雰囲気に合わせるように、標準レンズで手持ちが多く、後半のシリアスなシーンは望遠レンズで詰まった画を作っています。視野が狭くなっている感覚や、窮屈さやヒリヒリ感が出せたのではないかと思います。
――作るにあたって参考にした映画があれば…。
天野 イングマール・ベルイマン監督の「ある結婚の風景」は昔見て、ずっと心に引っかかっていました。生々しい夫婦の駆け引きの会話がとてもスリリングで、「こんな凄まじい映画を作ってみたい」と思いました。他にはノア・バームバック監督の「マリッジ・ストーリー」や、夫婦の喧嘩ではないですが、立場によるすれ違いの話としては、オリヴィエ・アサイヤス監督の「アクトレス~女たちの舞台~」ですね。
――夫婦関係を良好に保つには、どうしたらいいんでしょう。
天野 夫婦に限らずですが、どんな関係においても「自分と他者の視界は違う」ということを、まずは意識する。そして違う者同士がぶつかった時に、なんとか折り合いをつけようと粘る姿勢が大事かなと思います。それが難しいから、すれ違いや喧嘩や対立が起きてしまうわけですが。今は「自分と違うものは切り捨てる」風潮がどんどん強くなっている気がします。分からないからと切り捨てるのではなく、分からないままでどう一緒に生きていけるのか、を考え続けるのが大切ではないでしょうか。
※「佐藤さんと佐藤さん」は11月28日から絶賛公開中。
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