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記事全文を読む→ホントーク〈小泉悠×名越健郎〉(3)ソ連の崩壊直後がチャンスだった!
名越 この本の中で小泉さんは「軍事的価値があるからロシアは北方領土を返さないという従来の見方では説明しきれない問題がある」と指摘されています。
小泉 もちろん、軍事的価値がゼロとは言いません。ただロシアは、軍事の上に政治がくる国です。論理では説明できない振る舞いを平気でする。つまり、領土の価値以前に、政治的に返す気がないということです。
名越 本書ではロシアの軍事施設の衛星画像も紹介されていますが、あれだけでも軍事オタクは読む価値があります。あの衛星画像は毎日チェックしているのですか。
小泉 天候が悪くて画像が見えない時以外は、確認しています。
名越 最近、新たな動きはありましたか。
小泉 択捉島のヤースヌイ空港に関して言うと、19年に戦闘機が配備されて話題になりましたが、動いているところはほとんど見たことがないし、弾薬庫もありません。ただ、カムチャッカ半島で進んでいる原子力潜水艦基地の拡張工事現場に11月、中国船が来ているのは確認されています。これは警戒が必要だと感じました。
名越 歯はぼ舞まい諸島はナマコの産地で、中国人が買いに来ているという話は聞いていましたが、カムチャッカ半島にまで首を突っ込んでくるとなると、さらに話が複雑になりますね。日本は今後、北方領土についてどう対応すべきでしょうか。
小泉 ロシア側には「相手が敵対的でなければ交渉の余地はある」という発想があります。ところが、安倍政権以降、プーチン大統領は「お前たちは日米同盟を結んでいるじゃないか」と一貫して言っています。そんな相手に土地を返す理由がない、というのが彼らの理屈であり、日本の弱みでもある。私は日本が安全保障の根幹を日米安保に置く以上、北方領土の早期解決は諦めるくらいの割り切りが必要だと思います。無理にこちらから「話し合いましょう」と言ってしまうと「日本はこれが弱みだ」と、足下を見られるだけ。むしろ黙っているのが大人の対応だと思います。
名越 ベーカー元米国務長官が「外交はタイミングがすべて」と回想録に書いていましたが、返してもらえるチャンスはソ連崩壊直後の一時期しかなかった。でもその時、日本外交は動かなかった。今は変に動くと、ロシアに利用されるので、次のチャンスを気長に待つしかないですね。
小泉 僕もそう思います。
ゲスト:小泉悠(こいずみ・ゆう)1982年千葉県生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授。早稲田大学社会科学部、同大学大学院政治学研究科修了(政治学修士)。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、未来工学研究所研究員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員、国立国会図書館調査員等を経て19年に東京大学先端科学技術研究センター特任助教。23年より現職。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。
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