エンタメ
Posted on 2025年12月24日 06:45

「平成レトロ」に群がる大人たち「シール売り場」の怒号と略奪が映し出す「失われた自己肯定感」

2025年12月24日 06:45

 少し前から世間を白熱させている「平成レトロ」ブーム。今年の新語・流行語大賞には「平成女児」という言葉がノミネートされた。1990年代後半から2000年代初頭に小学生時代を過ごした女性が、当時親しんだシールや文房具、キャラクター文化を懐かしむ動きで、平成ならではのキッズカルチャーが再評価されている。
 本来はZ世代を主なターゲットにしたブームとされているが、実際に熱量を生み出している中心層は、むしろ平成初期をリアルタイムで過ごしたアラサー、アラフォー世代だ。その象徴が、立体型シール「ボンボンドロップシール(通称ボンドロ)」をめぐる過熱ぶりである。

 クリスマス商戦と重なる12月、シール売り場では開店前から大人が列を作り、品出し中の店員に群がる光景が日常化した。Threadsでは〈シール販売員です。マジで疲れました〉という投稿が拡散。怒鳴る、奪い取るといった行為への対処に疲弊し、退職する店員が出ているという。こうしたトラブルの中心にいるのは子供ではなく、その親世代の大人だ。

 彼らがここまで熱くなる理由は、単なるコレクション欲によるものではない。平成のシール文化は友達同士で見せ合い、レアな一枚を持っているだけで承認される世界だった。スマホもSNSもなく、将来に対する不安が今ほど重くなかった時代。その記憶がシール一枚をきっかけに、一気に甦る。そこにあるのは懐かしさというより、失われた自己肯定感を取り戻したい、という切実な欲求だ。

 その背景に見えるのは、日本社会が長年かけて作り上げてきた「大人になることが報われない構造」。責任が増え、余裕は削られ、努力すれば未来が開けるという物語は崩れた。そんな社会で精神的に成長し続けろと言われても、逃げ場は少ない。だったらせめて、心だけでも楽だった時代に戻りたい。その欲求こそが、平成レトロブームの正体だといえるのだ。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/12/23発売
    ■680円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク