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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈未解決の「世田谷一家殺害事件」初動捜査の失敗を招いた原因は〉
「成城管内ですごい事件が起きている‥‥」
小平署で宿直していた俺は、署内にいる全員に無線を聴くように促したのを、今でも覚えている。それが、警視庁三大未解決事件と呼ばれる「世田谷一家殺害事件」だ。
会社員宅で夫婦と幼い子供2人が殺害されていたことが、00年の大みそかに発覚。犯人の指紋、DNA、など大量の決定的遺留品が残されていたにもかかわらず、25年間犯人を特定できていない。その理由は、初動捜査の失敗にある。
多数の証拠品を残して逃走したことで、おそらく捜査員が思い描いた解決時間は約1週間。捜査方針もモノの捜査が中心になったが、あまりにも証拠品が多かったことで「情報の洪水」を生み、犯人を絞り切れない袋小路に入った。
犯人の行動も捜査員の混乱を招いている。
本来4人も殺害すれば、いち早く現場から立ち去りたいものだが、家の中に長時間居座っていた。麦茶を飲み、スプーンを使わずにアイスクリームを4個食べ、ソファーに寝転がり、トイレで排便までしているのだ。通常の殺人事件と比べて、逸脱している点が数多く、異常すぎて心理学が通じず、正確なプロファイリングができなかった。
年末年始の特殊事情も、捜査を難航させた大きな原因だ。近隣住民が帰省や旅行に出かけていれば、不審者がいても「日常の定点的観測」が効かず、目撃証言は限られる。行政機関や商店街の店舗も休みに入り、防犯カメラの管理者への連絡もつきにくい。
警察も年末年始は特別警戒を実施する。担当所轄は別の管轄の警備に回るため、人員の「空白地帯」ができて、捜査員を大量導入することができなかった。通常は聞き込みを徹底するが、新年のお祝いムードの最中、殺人事件について尋ねることに躊躇する、捜査員の心理も手伝った。
初動の遅れを取り戻すように、これまで約5000万件の指紋を照合したが、一致せず。指紋採取の苛烈なプレッシャーに、警部補が家族の指紋を押して捜査報告書を偽造する不祥事も起きている。
俺も04年に一課に配属後、被害者宅を見るように指示を受けた。鑑識課で事件に関する写真も確認したが、残虐な殺害方法だがプロの仕業とは思えなかった。特に年末年始を狙ったとも思えない。被害者宅前にフランスメーカーの自家用車が停まっていたから、短絡的な発想で金持ちだと判断し、浴室の窓から侵入したのではないか。
犯人のDNAを解析し、父方は日本を含む東アジア系の可能性が高いことが判明している。当時、被害者宅の周辺に外国人が住んでいる寮があったが、そこの聞き込みは不十分だった。捜査員は当たるべきだったことが悔やまれる。
成城署特別捜査本部では、今も解決に向け懸命な捜査が続いている。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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