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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈人気ドラマに憧れて警察に入庁。現実世界と物語の差に幻滅し…〉
14年ぶりに「踊る大捜査線」シリーズの最新作が公開される。新宿・歌舞伎町のライブカメラには、織田裕二扮する青島俊作がお馴染みのモッズコートにスーツ姿で走る撮影の様子が映り、話題になった。
「踊る―」が放送された97年以降、熱血刑事の主人公に憧れて警察に入庁した若者は多い。青島のように脱サラをして、転職してくる者も多くいた。俺も昭和の名作ドラマ「太陽にほえろ!!」に影響された一人だ。
だが、現実を知るのは時間の問題である。特に「踊る―」は些末な描写までリアルだと評され、署内で刑事が書類仕事をしている場面もあった。が、実際はドラマの比ではない。捜査メモ、報告書、調書、差押調書、始末書、領収書の整理など事務仕事は多岐にわたる。夜中3時まで書類を作成し、朝7時に張り込みすることも珍しくなかった。
俺が「刑事生活」をスタートさせた麴町署の刑事課の暴力犯係では、強面ぞろいの先輩刑事に調書や実況見分を書くように指示され、不出来で何度も破られた。今はパソコンで簡単に訂正できるが、当時は手書きなのですべて書き直し。厳しかったけど、先輩刑事は「仕事を教える」という思いがある。花形の一課に配属されても、麴町署で鍛えられたことが自信につながった。
刑事の仕事には、ドラマのようなカッコよさはない。やりがいを見つける前に幻滅して辞めていく者も少なくなかったが‥‥。
「踊る―」では、警察社会の縦割り構造や上下関係も克明に描かれ、警視庁を「本店」、所轄署を「支店」と呼んでいた。青島が所属する湾岸署に帳場(捜査本部)が立つと、一課の刑事が我が物顔でやって来るが、俺も所轄時代は嫌で仕方なかった。手柄は取られて、何か問題が起きると「所轄の責任」にされるなどの理不尽が多いからだ。
それでも、「どうぞ一課様」と平身低頭で出迎え、お茶くみから深夜0時過ぎまで続く酒の買い出し。朝食の用意も署員の仕事。このご時世、所轄から負担が多すぎると苦情が出て、改善されている。
警察のキャリア組とノンキャリア組との「対立」や「格差」も、作品を通じて知られるところとなった。中でも、98年の実写映画第1弾では、青島がパトカーの無線機を使い、
「事件は会議室で起きてるんじゃない!! 現場で起きてるんだ!!」
と、会議室の警察官僚たちに向かって怒鳴るシーンが有名である。
誤解している人もいるが、上層部が無能なのではない。そもそも「役割」が違う。刑事は犯人を捜して証拠を集めるのが主な仕事で、キャリアは政治対応や法的リスク管理などが仕事。現場にキャリアが来ても捜査のイロハを知らないので、足を引っ張るだけ。一般社会同様に、適材適所は「現場」にもあるのだ。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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