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記事全文を読む→〈立川談志「最後の弟子・立川談吉」が書く「最期の時」〉第1回(1)師匠は改造人間になるのか?
立川談志が世を去って、今年で15年。晩年の談志に伴走した最後の弟子も、今年、真打昇進を迎えることになった。立川談吉。師を超える「師匠殺し」はかなわず未遂に終わるも、談志に触れた日々は噺家としての根幹となっている。談吉が見たわが師の素顔。誰にも語ることのなかった談志最期の日から始めよう。
2011年11月21日午後2時44分、立川談志の長男、慎太郎さんからの電話だった。
「父が亡くなりました、病院に来られますか」
胸の奥にしっかりハマッていた何かの塊が、泡沫のごとく消えていった。
その日は朝から憂鬱だった。師匠談志の余命が残りわずかと聞いていたので、夜中の間に亡くなっていたらと心配していた。起きてすぐ冷たい水で顔を洗い、慎太郎さんに電話で安否を確認し、軽く安堵してから家を出た。空はよく晴れていたが、頭の中はおもちゃ箱のように散らかっていた。
「おはようございます」
根津駅に近い日本医科大学附属病院に着くと談志のご家族が勢揃いしていた。病室のベッドで点滴やら電子機器やらをめちゃくちゃにつけられた師匠は、改造人間にでもされるのかという趣だった。談志ライダーになるのか、はたまた怪人落語男になるのかはわからないが、力なく寝ている様子を見て、改造でもなんでもして欲しいと思った。
「談吉くん、おはよう」
師匠のおかみさんはよほど疲れ切っていた。一睡も出来なかったのだろう。自分は血族ではないのでご家族の皆さんに悪いと思い、なるべく遠くに控えていた。なんとなく落語の小僧定吉の気持ちがよくわかった気がした。
「パパ、談吉くん来たよ、談吉くんこっちへ入って」
長女の弓子さんが小僧を呼んでくれたので、へーいとばかりに師匠の寝ているベッドのそばへ行って挨拶をした。
「おはようございます」
当然返事はなかったが、よく考えたら元気な時でもそんなに返事はなかった気もする。何か一言もらったくらいの間を頂いて、かしこまりましたとばかりに後ろに下がった。
心電図のモニターにはなんらかの数字が表示されていたが、小僧にはわかるすべがない。ご家族総勢十人ほど、口を開いたり閉じたりを繰り返していた。落語の世界とは違う家族だけの大事な時間に小僧の定吉がいては不自然だと思い、慎太郎さんにその旨を伝えて席を外した。
すぐに駆けつけられるよう近くにいたはずだが、どこで何をしていたのかは覚えていない。フラフラと外を歩いたのちどこかの歩道の隅で電話を受け、再び病院に戻った。
立川談吉(たてかわ・だんきち)1981年12月14日生まれ。北海道帯広市出身。2008年3月に立川談志に入門。11年6月に二ツ目昇進。12年4月に立川左談次門下へ。18年7月に立川談修門下へ。26年3月1日に真打昇進「立川談寛」襲名予定。
写真/産経ビジュアル
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