政治
Posted on 2026年01月26日 07:00

前駐豪大使・山上信吾が日本外交の舞台裏を抉る!~高市「解散・総選挙」の大義3本柱と「横暴・中国」との適切な間合い~

2026年01月26日 07:00

 いよいよ衆議院総選挙が近づいてきた。一部の野党やオールド・メディアからは「国民生活を無視」「大義なき解散」などという声がかまびすしい。
 だが外交・安全保障という観点から見れば、国民の信を問うべき大きな問題が厳然としてある。順を追って説明しよう。

 第一は、連立の枠組みが抜本的に変わったことだ。
 26年余の長きにわたって続いてきた自民党と公明党の連立はようやく終焉を迎え、自民党は日本維新の会と組んだ。そもそも「反戦・平和・護憲」を旨とする公明党が憲法改正を目指してきた自民党と共に政権を担ったこと自体が「野合」と言えよう。その公明党が自民党から自ら離れ、よりによって左翼政党の立憲民主党と一体化した。こうした展開によって、対立軸はこの上もなく明確となった。

 殊にベストセラーとなった門田隆将さんとの共著「媚中」(ワック)で詳述したとおり、永田町、霞が関を覆う媚中の大きな立役者が公明党であったことは、紛れもない史実だ。「岸破外交」の媚中から脱却し、中国に対して毅然とした外交姿勢を貫こうとしている高市政権から公明党が離脱を決意した背景に、対中配慮があることはつとに指摘されてきた。
 まさしく、日本外交の最も重要な柱のひとつである対中政策について根本的な組み換えが行われた今、有権者の審判を仰ぐべきは当然だろう。

 第二は、安全保障政策の根幹をめぐる意見の相違が、国会審議を通じて明らかになったことだ。
 かつての民主党政権で外務大臣まで務めたのが岡田克也議員だった。台湾周辺での中国による海上封鎖という仮定の問題設定をしたのは、当の岡田議員自身。同議員からの執拗な質問に答え、高市早苗総理は一定の台湾有事が存立危機事態になりうるという、当然の法理を説明した。これに対し、答弁が不適切であるとして声高に撤回を求めてきたのが、立憲民主党だ。公明党も同じ穴のムジナだろう。

 台湾が中国に併合されて中国共産党の赤色に染められれば、台湾だけの問題だけで済まないのは世界の戦略家の常識だ。東シナ海における制海権、制空権が中国共産党の手中に落ち、沖縄をはじめとする在日米軍は再編を迫られ、日本の国防が危殆に瀕するのは必至だ。
 そんな危機感を持つことさえなく、高市答弁を政治的にあげつらう姿勢は、心ある多くの国民の失望を招いてきた。そして中国政府と対立している時に自国の総理大臣の背後から弾を撃つ性根は、国民を辟易させた。今こそ有権者の信を問うべきだろう。

 第三は、中国との間合いの取り方をめぐる国論の分裂だ。
 高市答弁に対しては財界の一部からも、批判の声があがった。よりによって関西経済連合会の松本正義会長は「あれはダメ」などと述べ、僭越にも一国の総理大臣の言動を十把一絡げに斬って捨てた。のみならず「万博が汚れる」などという品のない痛罵を浴びせた。
 自国の政治的独立と安全保障が確保された上での経済活動であり、万博だ。それなのに、中国に何をされようとも、地べたに額を擦りつけてでもビジネスをしたいと言いたいのだろうか。
 国家として守るべきものは経済的利益に留まらない。長年守ってきた国柄、国民の矜持、国際社会で培ってきた尊敬と名誉ある地位。これらも守るべき重要な国益だ。金儲け至上主義は、多くの日本人が強く忌避するところであった筈だ。

 このように見てくると、解散・総選挙の「大義」は明らかだ。
 日本の歴史を紐解けば、一方では経済的利益を前面に押し立てて朝貢貿易に走った、平清盛や足利義満の如き為政者がいた。他方で対等な関係を希求した聖徳太子、元寇の脅威に体を張り、命を縮めてまで戦った北条時宗、安全な間合いを取るべく鎖国を講じた徳川家康もいた。明治の知的巨人・福澤諭吉は「中国人は謝絶すべき悪友」とまで喝破し、脱亜入欧を説いた。
 まさに、永遠の隣国である中国との適切な間合いを、如何にして取っていくかが問われている。軍事・経済大国となり横暴を極める中国に脅え、その意向を忖度する小国に堕していくのを良しとするのか。祖先から引き継いだ、凛とした日本を大事に守っていくのか。日本の針路を決める選挙である。

●プロフィール
やまがみ・しんご 前駐オーストラリア特命全権大使。1961年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、84年に外務省入省。コロンビア大学大学院留学を経て、ワシントン、香港、ジュネーブで在勤。北米二課長、条約課長の後、2007年に茨城県警本部警務部長を経て、09年に在英国日本国大使館政務担当公使、日本国際問題研究所所長代行、17年に国際情報統括官、経済局長を歴任。20年に駐豪大使に就任し、23年末に退官。同志社大学特別客員教授等を務めつつ、外交評論家として活動中。著書に「中国『戦狼外交』と闘う」「日本外交の劣化:再生への道」(いずれも文藝春秋社)、「国家衰退を招いた日本外交の闇」(徳間書店)、「媚中 その驚愕の『真実』」(ワック)、「官民軍インテリジェンス」(ワニブックス)、「拝米という病」(ワック)などがある。

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