社会
Posted on 2026年06月05日 12:30

家の前の「乗り上げブロック」に「置くな!法律違反」千葉県船橋市で大論争&猛反発が渦巻く「段差」トラブル

2026年06月05日 12:30

「じゃあ、段差なくせや」
 千葉県船橋市に、そんな声が次々とぶつけられた。市が呼びかけたのは「道路に物を置かないで!」。「乗り上げブロックなどを道路上にみだりに置くことは、法律で禁じられています」という注意である。だが、返ってきたのは感謝ばかりではない。「言うのは簡単だが、どうすればいいのか」という、住民の率直な戸惑いと反発だった。

 発端は6月1日、船橋市の公式Xである。市はあわせて、自宅や駐車場への乗り入れのために出入り口に置く乗り上げブロックやプラスチック製ステップ、鉄板、鉢植えなどは道路法で禁止されている、と説明した。
 この投稿は6月5日時点で695万表示を超えて広がり、「これ本当に危ない」「全国で取り締まってほしい」という賛同の一方で、「独善的だ」と市を責める声が渦巻いた。

 そもそも、なぜ禁じられるのか。道路は自宅の前であっても公共の空間であり、勝手に物を置く自由はない。道路法第43条は「みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為」を禁じている。
 道路際のブロックは、雨の日や視界の悪い時間帯に、自転車やバイクの転倒を招きかねない。雨水の流れをせき止め、冠水の一因にもなる。安全と排水という、譲りにくい事情があるのだ。

 ここで見過ごせないのが、段差そのものへの不満である。歩道と車道の段差は車の出入りだけでなく、車いすやベビーカーにとっても気になる場所になりやすい。だからこそ、住民が手軽なブロックで埋めたくなる気持ちはわかる。だが公道に置けば、今度は別の通行者にとっての障害物になる。

「私道なら大丈夫」とは言い切れないややこしさ

 問題は「危険だから撤去せよ」で終わらない点だ。安全な乗り入れ口を作るには、道路管理者の承認を得た「切り下げ工事」が必要で、船橋市はその費用を自己負担としている。事前に道路管理課へ道路工事施行承認申請(道路法第24条)を出し、許可を得てから着工する流れだ。便利グッズを撤去した先に、申請と工事費が待っている。住民の反発は、そこに向けられているのである。

 道路上の私物は、ブロックだけではない。京都で知られる「いけず石」は、通る車に壁や塀をこすられたりぶつけられたりするのを防ぐために角の家に置く石で、自分の敷地内であれば通常は別問題となる。
 一方、公道にはみ出して通行を妨げれば、道路交通法第76条第3項に触れるおそれがある。ややこしいのは私道で、不特定多数が通行できる状態なら道交法上の「道路」と扱われることがあり、「私道なら大丈夫」とは言い切れない。植木鉢、店先の看板や商品、自転車やバイクも同じだ。見慣れた風景でも誰かの通り道を塞げば、トラブルの種になる。

 やっかいなのは、こうした物の多くが長年の暗黙の了解で置かれ、撤去を言い出しにくい点である。「昔から置いてある」は理由にならず、事故が起きれば置いた側が責任を問われることがある。それでも「置くな」のひと言だけでは、住民の納得は得にくいのが現実だ。
 段差をどう安全に解消し、その負担を誰が背負うのか。船橋市の投稿が炙り出したのは、わが家の前の小さな段差が抱える、思いのほか根の深い問題だった。

(ケン高田)

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