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Posted on 2026年06月28日 18:01

小泉今日子「アイドル」を脱いだ女〈後編〉(2)サイコパス殺人者がハマる

2026年06月28日 18:01

 一方、同年10月からフジテレビ系の月9枠の学園ドラマ「愛しあってるかい!」に教師役で出ると、26%の高視聴率をとり、主題歌となった、フィンガー5のヒット曲をカバーした「学園天国」は33万枚を売った。アイドルとしての人気も維持するのだ。

 先鋭路線と大衆路線とのバランスが絶妙で、天才的とすら言える。

 91年に田村正和の娘の役で出演したTBS系「パパとなっちゃん」では、主題歌「あなたに会えてよかった」を自ら作詞し、当時だけで105万枚(累計158万枚)を越え、小泉のシングル売上枚数の最高記録となった。さらにレコード大賞の作詞賞を受賞してしまう。93年の「優しい雨」も主演ドラマ「愛するということ」(同)の主題歌で、これもミリオンセラーになる。

 小泉は女優と歌手、そして作詞家として、ひとりでメディアミックスを展開していたのだ。

 2013年には、NHKの朝ドラ「あまちゃん」に母親役で出演し、劇中歌「潮騒のメモリー」を歌うと、レコード化されヒットした(ドラマの役名「天野春子」名義)。宮藤官九郎が書いたこのドラマでの小泉は、アイドルを目指したが普通の主婦になり、年ごろの娘がいる女性という、メタフィクション的面白さがあった。

 1994年から小泉は雑誌「an・an」(マガジンハウス)にエッセイ「パンダのan・an」を連載し、97年に単行本として刊行されると50万部のベストセラーになった。今度は自身がベストセラー作家になったのだ。

 2005年には読売新聞の書評委員に抜擢され、10年にわたってつとめ、その書評は「小泉今日子書評集」(中央公論新社)として刊行された。文化人・小泉今日子の誕生である。もうタレントの余技ではなかった。かといって偉そうな「先生」にもならない。

 女優としては、名演出家・久世光彦のドラマに1983年の「あとは寝るだけ」(テレビ朝日系)に出た後、久世の秘蔵っ子となり、彼が作る芸術色の濃いテレビドラマに出演していく。久世の遺作となった2003年の「センセイの鞄」(WOWOW)で、小泉は芸術選奨新人賞を受賞した。

 映画での転機は、1998年の「踊る大捜査線THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!」(東宝)だ。まだ「かわいいキョンキョン」のイメージがあった頃だが、サイコパスの殺人者を演じたのだ。

 99年には「共犯者」(東映)で、竹中直人とともに凶悪な組織と闘う役で出た。映画はヒットしなかったが、これを見た映画監督・相米慎二が、2001年公開の「風花」(シネカノン)に起用し、小泉は日本アカデミー賞優秀主演女優賞を得た。

 女優としての小泉今日子は、演出家がその演技力と存在感を必要とする「個性派女優」になった。

 映像だけでなく舞台にも挑戦した。1997年に出演した「紙のドレスを燃やす夜」が最初で、以後、東宝などの大劇場での演劇ではない、意識高い系の観客に向けた舞台に出て、ついには自分でプロデュースする。

中川右介(なかがわ・ゆうすけ)作家、編集者。出版社アルファベータ編集長。歌謡曲に論及した「松田聖子と中森明菜」「山口百恵」ほか、クラシック音楽、歌舞伎に関する著書多数。

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