例えば、こんな場面を想像してほしい。休日の昼下がり、渋滞を避けようと、カーナビが案内した田畑の間の脇道へ入る。一般に使われている道で、車同士がすれ違える程度の幅はある。だが速度を指定する標識や標示、中央線、車両通行帯はなく、中央分離帯や柵も...
記事全文を読む→中国・習近平がウクライナへの「祝電」に書かなかった「アレをやったらプーチンと決別」
ウクライナ東部の前線後方で、強烈な閃光が走る。通信は途絶え、放射性物質を含む雲が国境方向へ流れ始めた。欧州各国の放射線量モニターが跳ね上がり、NATOは緊急協議に入る。原油先物は急騰し、株式市場は暴落。北京では習近平政権が対応を迫られる――。
これは現時点で実際には起きていない、悪夢の想定だ。だが、完全な絵空事とは言い切れなくなっている。アメリカのメディア「Bloomberg」は、ロシア政府中枢クレムリンに近い複数の関係者の話として「ロシア政府内で戦術核を最後の手段として語る声が増えている」と報じた。
5月にはロシアと隣国のベラルーシが、6万4000人規模の核戦力演習を実施。プーチン大統領とルカシェンコ大統領が両首脳として初めて、ビデオ回線で演習に参加した。専門家のひとりは、核使用の可能性を「極めて低い」とみるが、その「極めて低い」がじりじり底上げされている空気がある。
この緊張のさなか、ウクライナではゼレンスキー大統領が、一通の書簡を世界へ公開した。中国の習近平主席がウクライナ独立記念日に寄せた祝電だ。
「中ウ友好は両国民の根本的利益に合致する。相互尊重と平等互恵に基づき、関係を発展させたい」
内容はそれだけで、ロシアと戦争にはひと言も触れていない。中国側はこの祝電を自ら公表していない。
ゼレンスキー大統領はこれを自身のXに掲載し、「独立は全ての主権国家にとって無条件の価値である」「中国がロシアの戦争を終わらせるため、強い外交的役割を果たすことを期待する」と書き添えた。習近平がひと言も触れなかったロシアと戦争を、習近平の名前の隣に並べてみせたのだ。儀礼的な祝電を対露メッセージの台座に仕立て上げる手際は、外交的したたかさそのものである。
プーチンが一線を越えてしまえば黙っていない
祝電は侵攻後初ではなく、2025年に続く2年連続のもの。だが、これをもって「プーチンとの決別」と判断するのは早計だ。今年5月、習近平主席はプーチン大統領を北京に招待。プーチン大統領は両国の関係が「前例のない水準に達した」と語った。
中国はロシア産原油の最大の買い手であり、経済的な紐帯はむしろ太い。それでもウクライナへの外交回線だけは切らずに残しているのだ。
8月25日には米CIA長官ジョン・ラトクリフが事前公表なく、モスクワを訪れた。バルト三国ではロシアによる軍事挑発への警戒が公然と語られ、NATOとの直接衝突が現実味を帯びている。
仮にプーチン大統領がウクライナで戦術核を使っても、NATOの核報復が自動的に始まるわけではない。ウクライナはNATO加盟国ではないからだ。
選択肢として論じられているのは、米欧の通常兵力による反撃、追加制裁、NATO軍の態勢強化だ。中国やインドがロシアと距離を置く可能性もある。
習近平はまだプーチンを見捨ててはいない。だが過去に「核兵器は使ってはならず、核戦争は起こしてはならない」と明言した指導者が、戦術核の閃光が走る瞬間まで黙って付き合うとは考えにくい。狂気の男、プーチン大統領がその一線を越えれば、中国が距離を置く可能性は一気に高まる。ゼレンスキー大統領が公開した一枚の祝電は、中国がその日に備えて残した「離脱の足跡」かもしれない。
(ケン高田)
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