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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第9回「トクリュウの資金を動かす装置。相対屋が明かした精錬所ルート」〉(2)スクラップでも現金に
では金塊は、どこで現金になるのか。
14年ごろの御徒町を思い出してほしい。香港から運んだ金塊を宝飾店街の買取業者に持ち込めば、インゴットでなくスクラップでも、その場で現金になった。もうひとつ、表の出口があった。
輸出だ。金塊を国外へ出せば、消費税分が還付される。密輸品を買い取って正規に香港へ輸出すれば還付が立ち、その金塊はまた密輸で戻ってくる。一周ごとに消費税が闇に落ちた。
だが法改正でその両方が塞がれた。
「業者じゃなきゃダメとか。インゴットの刻印が押されてても、シリアルナンバーで出どころがわかんないとダメとか。あと、売買した人の身分証がないとダメとか」
表の出口は、もうない。
残ったのが、精錬所ルートである。
保坂の出番だ。御徒町界隈に精錬所は7つほどあり、保坂はそのうち3、4カ所と懇意にしている。ただし1日の枠は決まっていて、持ち込めばその場で売れるものではない。
「例えば2000万のものを今日渡すじゃないですか。精錬して含有量がわかって、成分表が出て、これ99.97でしたとかなったら、その分引かれて」
純度の話だ。持ち込んでから成分表が出るまで、2日。その間に相場が動けば、差額は持ち込んだ側が抱える。
そして価格だ。
精錬所の買取値は、パーセンテージでは示されない。ロンドンの金相場から、1グラムあたりいくら引くか。その引き算で提示される。
「今は1600」
相手によっては2000円まで引かれることも。金価格が1グラム2万3000円台の今、1600円は7%近くにあたる。
正規の買取業者は消費税分を乗せて払い、仕入税額控除で取り戻す。だが身分証のない金塊では控除が立たない。乗せれば丸損。だから誰も乗せない。
裏の金塊は、相場から1600円を引いた裸の値段でしか売れない。香港で相場どおりに買った金塊を、相場より安く売る。
「もう合わないんですよ、金額が」
合わないから、入ってくる金塊も変わる。
アフリカなどからの、精錬されていない天然の金塊─ナゲットだ。偽物も混じる。刻印のあるインゴットにすれば出所を調べられるから、溶かしてネックレスや工芸品に変えてしまう。金塊の相対とは、そうした塊を精錬所に繫ぐ仕事でもあった。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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