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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第9回「トクリュウの資金を動かす装置。相対屋が明かした精錬所ルート」〉(3)法人口座は「1000万円」
その取引の代金は、どう受け取るのか。
「円で受け取ると、全部足がつくんで」
だから暗号資産で払う。USDT、ビットコイン。これなら足はつかない。だが─。
「フラッシュコインっていうのがあって」
聞き慣れない言葉だった。
「最初から作り込まれてて、その暗号資産自体がダミーなんですけど」
例えば1億円分の代金を、暗号資産で受け取る。受け取った側は、まず100万円分だけ動かしてみる。使える。安心する。安心させる。
「でもフラッシュコインだと、その後に移動させようとすると、全部消えるように仕組まれているんですよ」
100万円分だけが本物で、残りは画面の上にしかない。
海外では「フラッシュUSDT」の名で知られる詐欺だ。
警察に駆け込んでも、暗号資産は「財物」ではなく、強盗罪は使えない。現金なら強盗。だがコインでは、立件の難しい話になりかねない。
「その詐欺が、ものすごく起きています」
金塊でも起きていた。
やり方は同じだ。買い手を装う者は、最初は1キロ、2キロの小口で約束どおりに払い、信用をつける。
次は30キロ。今の相場なら、約7億円だ。30キロを受け取ったところで、飛ぶ。
足のつかない受け取り方は、まだある。この世界では、銀行口座にも値段がついている。
「みずほだと230万、三井住友だと120万とか。三菱は高いんですよ。今でも500万ぐらいついてて、半年前は1000万で売買されてたんで」
法人口座の売買相場である。買うのは、ほとんどが中国人だという。そしてここ近年の金密輸事犯でも、中国籍の名前が目立つ。
今の御徒町を、保坂はこう見ている。
「逆に、いまだに金塊を触ってるやつは変なブローカーとか。まともなやつがいないですよね」
買って、運んで、売る。その商売が成り立たない値段で、金塊は動いている。
ならば、出どころはどこか。
「それで、あれが増えてるんですよ。タタキ」
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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