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別の41歳のドライバーも、8月だというのに厚手のコートを着た20代とおぼしき男性を乗せた。夕方のことだった。目的地を尋ねたが、黙ったまま。前を指さしていたので再度聞くと、「日和山」と言った。
日和山は津波の被害が最もひどかった南浜地区の背後にある山。ドライバーは日和山まで車を走らせたが、到着した時、男性は後部座席にいなかった。
ドライバーは工藤さんにこう話したという。
「怖かったよ、本当に。生気を感じなかったうえに、季節外れの格好をしていたあたりからして不審には思ったけど、まさか幽霊が出るとは思わなかった。でもなぁ、日和山の海岸側の南浜の更地と夕日を見たら、自然とその怖さもなくなっちゃったんだよね」
小学生の女の子を乗せたのは、49歳のドライバーである。13年8月のことで、車庫に回送する途中だったが、手を上げている女の子を発見し、タクシーを歩道につけた。
女の子は季節外れのコート、帽子、マフラー、ブーツを身に着けていた。
「お嬢さん、お母さんとお父さんは?」
「独りぼっちなの」
迷子だと思ったドライバーが家の場所を聞くと返答があったので付近まで乗せていってやることにした。
「おじちゃん、ありがとう」
下りる際、ドライバーが手を取ってあげたので、女の子は礼を言った。が、運転席に戻ると、女の子は忽然と姿を消していたという。
「そのドライバーは工藤にこう話したといいます。『噂では、他のタクシードライバーでもそっくりな体験をした人がいるみたいでね、その不思議さはもうなんてことなくて、今ではお母さんとお父さんに会いに来たんだろうなって思ってる。私だけの秘密だよ』と」(金菱教授)
57歳のドライバーは14年6月の正午頃、手を上げている人物を発見して車を止めると、マスクをした男性が乗り込んできた。
ドライバーが目的地を聞くと、答える代わりに、
「彼女は元気だろうか」
と独りごちた。
彼女? 共通の知人のことなのか? ドライバーはこの男性と知り合いだったかなと思い、
「どこかでお会いしたことありましたっけ」
と聞き返す。すると──。
「彼女は‥‥」
と言いかけて、気づくともう姿はなかった。
ところが男性が腰掛けていた場所には、リボンが付いた小さな箱が置かれていた。ちょうど指輪でも入るような‥‥。男性が「彼女」にプレゼントするつもりだったのだろうか。
驚くべき「物証」を残していった「幽霊」。あれから2年近くが経過したが、ドライバーはその箱を開けることなく、車内に保管しているという。
「ちょっとした噂では聞いていたけど、実際に身をもって体験をするとは思っていなかったよ。さすがに驚いた。それでも、これからも手を上げてタクシーを待っている人がいたら乗せるし、たとえまた同じようなことがあっても、途中で降ろしたりなんてことはしないよ」
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