社会
Posted on 2016年06月13日 05:55

秋津壽男“どっち?”の健康学「睡眠中で気づかないいびきと歯ぎしり。家族の助けで無呼吸症候群の確認を!」

2016年06月13日 05:55

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「うるさくて寝てられないと、カミサンが別の部屋で寝るようになっちゃいました」など、不眠を訴える患者さんが増えています。

 特に多いのが、「ギシギシ」と鈍い音を出す「歯ぎしり」と「ガーガー」と息をする「いびき」で、いずれも健康に悪く、また隣で寝ている人の安眠を妨害します。

 では、いびきと歯ぎしりはどちらが健康に悪いでしょう。

 歯ぎしりは、かみ合わせの悪さから顎関節症の原因となります。

 顎関節症とは寝ている間に歯ぎしりをしたり、奥歯をかみしめている人に見られる症状で、歯ぎしりが激しくなると「かむと痛い」歯根膜炎や、歯がしみたり歯周病などが原因でかみ合わせが悪くなると、虫歯や歯周病が悪化します。

 それだけではありません。顎周辺の関節や筋肉が痛くなります。悪化すると、顎が外れやすくなったり、偏頭痛などを引き起こしたりします。

 歯ぎしりの治療法にはマウスピースや矯正などがあります。あるいはお酒を減らしたり、枕の高さを変えるなど睡眠環境を整える方法もあります。

 初期のうちは「眠りの質をよくする」ことを心がけるといいでしょう。

 また日頃から食いしばりが多い人もなりやすく、相撲やラグビーなども含め、スポーツ選手にとっては職業病と言えます。

 歯ぎしりの原因はストレスや歯並びの悪さなど、さまざま言われますが、医学的に解明されてない面もあります。ただ一つ言えるのは、悪い夢を見ていたり眠りが浅いなどの要因から、寝ている間に緊張や興奮をしているわけです。本来、リラックスして体を休ませるための睡眠が、精神的に妨げられているとも言えます。

 睡眠障害である歯ぎしりと異なり、いびきは呼吸障害です。

 鼻から肺のどこかが狭くなっており、息の通りが悪くなって起こります。熟睡ができないため翌日も疲れが残り、昼間に居眠りを引き起こします。

 悪化すると睡眠時無呼吸症候群となりますが、これがいびきの怖さです。

 家族は「いびきが止まった」とホッとしますが、いびきだけではなく呼吸も止まっているのです。

 家族にいびきをかく人がいる場合、何秒ぐらい止まっているか計ってみてください。5秒程度なら大丈夫ですが、10秒や20秒となると明らかな病気です。一人暮らしの場合は、寝ている姿を録音したり、ビデオを撮るとわかるでしょう。格幅のいい人がなりやすい、とも言われており、ドリフターズの高木ブーさんなども長年悩まされていたそうです。

 いびきが怖いのは、睡眠時無呼吸症候群が悪化することで心臓が悪くなり、結果として心不全を起こしやすくなることです。

 また、昼間の居眠りにより交通事故を起こしやすくなります。運転を職業とする人にとっては、軽度でも命に関わる症状です。

 こちらもマウスピースを使ったり、鼻にマスクを装着して空気を送り込んだり(CPAP療法)、扁桃肥大の場合は手術も可能です。いずれにせよ治療をすれば治りますので、放っておかず医者に診てもらってください。

 歯ぎしりは顎関節症や頭痛、肩凝りで済みますが、いびきは命に関わります。つまり、体に悪いのはいびきのほうですが、いずれにせよ、本来、眠りとは体をリラックスさせるもので、歯ぎしりもいびきも眠りの目的を阻害しているのは明らかです。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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