スポーツ

12球団の「ヤング侍」汗と涙のブレイク秘話(7)

ロッテ 益田 母親が何度も見られるからと「中継ぎ直訴」
日ハム 吉川 ダルビッシュ愛に包まれて左腕エースに

 ロッテと日本ハム。開幕から優勝争いを繰り広げた2チーム。最終的には明暗が分かれたが、これほど新戦力が中心となって盛り上げた球団はなかった。

 ロッテの角中勝也(25)が、プロ6年目にしてようやくブレイクを果たした。打率は3割を超え、西武・中島裕之(30)と首位打者争いを繰り広げている。

 その角中は、全国の独立リーグでプレーする選手たちの“希望の星”でもある。高校卒業後、角中は四国アイランドリーグの高知でプレーしているが、

「父親からはスパルタ教育を受けたが、進学した高校は名門校ではなく、まともなキャッチボール相手がいる環境ですらなかった。ですから、技術的にかなり劣っていたそうです。しかしその反面、最大の魅力である打撃は伸び伸びと育ててもらえたようです」(スポーツライター・田口元義氏)

 ちなみに高知のトライアウトで角中は3タコを喫している。それでも入団を果たしたのは、森山一人コーチがキャッチャーフライの高さに驚愕したからだった。

 高い打球を打てるということは、ボールをミートする技術と、パワーがあるということ。「この選手はものになる」と、森山コーチが球団に頭を下げ、高知への入団が決まったのだという。

 しかし独立リーグの選手はお世辞にもいい給料をもらっているとは言いがたい。高知時代、角中の月給は13万円。新しい服を買うことができず、いつもジャージで過ごしていた。

 また、リーグの理解者が経営する居酒屋を訪れ、200円で食事をさせてもらうこともあった。そんな質素な生活を送りながらも、「プロへの夢を諦めることはありませんでした」と本人が語るように、決してクサるようなことはなかった。

 07年ドラフトでロッテから7位指名を受け入団。新しい服を買えるようになったのは、夢がかなった何よりの証拠だった。

「金森コーチからアドバイスされた」という、ホームベースぎりぎりに立つ泥臭い打撃。そのなりふりかまわぬ“雑草魂”にはますます磨きがかかっている。独立リーグ出身選手初の1億円プレーヤーが生まれるとすれば、その第1号は間違いなく角中になるだろう。

 さらにロッテには、新人王の大本命がいる。益田直也(22)は中継ぎとしてチームトップの63試合に登板。ホールドをマークし、防御率も1点台を誇っている。

 多くの投手が先発を希望する中、益田は入団当初から中継ぎでの起用を希望していたというのだ。

「その理由の一つが、益田の母親が息子の登板を楽しみにしているからです。両親は益田が1歳の時に離婚しており、母親がパート勤めをしながら益田を育ててくれた。そんな母親に1試合でも多くプロで登板している姿を見てもらうため、春季キャンプで西本投手コーチに中継ぎを直訴したんです」(ロッテ担当記者)

 女手一つで育ててくれた母親。益田は感謝の気持ちを込め、契約金全てを母親に渡している。また、母親とのメールのやり取りも、毎日欠かさないようにしているという。

 プライベートで本当に優しい一面を見せる益田だが、グラウンドでの性格はプロ向き。1年目のキャンプにもかかわらず、井口、今江といった主力選手の内角に、遠慮なくストレートを放っている。

 益田の親孝行は、チームの成績にも直結する。無限の可能性を秘めたルーキーは、ファン孝行な選手でもあるのだ。

 開幕前、多くの解説者が日本ハムをBクラスと予想した。大黒柱であるダルビッシュ有(26)がメジャー移籍。「その大きすぎる穴を埋めることは不可能」と予想してのものだった。

 だが、その穴は1人の投手が本格化したことにより、あっさりと埋まってしまった。もはやエースとして、ダルビッシュに勝るとも劣らぬ活躍ぶり。吉川光夫(24)の快投があればこそ、日本ハムは優勝争いを繰り広げることができた。

 吉川は1年目に4勝をあげ、まずまずのスタートを切った。だが、2年目以降、伸び悩んでしまう。その期間はあまりにも長かった。6年目となった今シーズン、ようやく覚醒するに至ったのであるが‥‥。

「吉川は制球難で苦しんでいた時期があり、そのことでダルビッシュからツイッター上で酷評されたこともありました」(前出・田口氏)

 かつて、ダルビッシュのツイッターには、このように書かれていた。

「吉川は4年目か。いったい今まで何回、今日みたいなピッチングを見たやろうか?」

「(本人はもう)感じてる?感じてるならとっくに変わってると思う」

 ダルビッシュは理由もなく同僚を批判するような選手ではない。事実、ダルビッシュは尊敬する楽天・佐藤義則コーチに吉川を紹介し、アドバイスを求めたこともあった。ツイッター上での厳しいつぶやきは、悩める後輩への彼なりの檄だったのだろう。

 転機となったのは栗山英樹監督(51)の就任だった。昨年、吉川はイースタンで投手三冠に輝いた。そのポテンシャルの高さに、栗山監督はずっとホレ込んでいた。

「栗山監督があえて制球力のなさを指摘しなかったこともあり、持ち味の速球が生きるようになりました。自然と腕が振れるようになり、制球力も高まっていった」(前出・田口氏)

 アメリカに渡っても古巣を愛するダルビッシュが、時に厳しく叱咤し、時に愛情を注いだ天才左腕。栗山監督のアシストも受け、優勝争いに貢献した吉川に、今度は何を“つぶやいて”くれるだろうか。

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