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小柄な体だが、そのハツラツとした姿は紅組リーダーの風格。幅広い層に愛されたチータこと水前寺清子(72)が、紅白に起きた22年のドラマを回想する。
──昨年は故郷・熊本の地震の影響もあり、紅白に「三百六十五歩のマーチ」でカムバックされるのでは、との予測もありました。
水前寺 そうでしたか。出る出ないに関係なく、支援は続けていきたいと今も思っていますよ。そうそう、実はあの曲は発売した年には紅白で歌っていなくて、発売から12年後(80年)に初めて歌ったの。
──22回連続出場を誇っていますが、初出場は65年、デビュー曲の「涙を抱いた渡り鳥」でした。
水前寺 私は星野哲郎先生のもとで4年間レッスンして、11曲も吹き込んだのになかなかデビューできなかった。それが予定より早くデビューが決まって、しかも紅白という大舞台。緊張はありましたが、紅組司会の林美智子さんが熊本のことに触れられ、そして「涙を抱いての初出場です」とおっしゃってくれたのかな。それが心強かったです。
──そして68年、三億円事件(12月10日)の記憶も生々しい大みそか、ついに紅組司会の大役を。
水前寺 その前の日に知らされたのかな。私、「歌は歌えるんですか?」ってまず聞いたの。
──と言うと?
水前寺 もし司会に専念で歌が歌えないなら断ろうと思って。幸い、歌手としても出場できましたけど。
──当時は両軍リーダーの選手宣誓がおなじみで。
水前寺 私、すごく緊張して心臓がドキドキして。かかりつけのお医者様にもらった精神安定剤を1錠飲んだら、胸がスーッとしたの。こりゃいいやと思ってもう1錠飲んだら、ヘロヘロになっちゃって。昭和43年を34年と言っちゃった。
──そして71年に2度目の紅組司会です。ここで紅白史に残る騒動とされるのが、女王・美空ひばりの曲紹介を拒否したとされる一件です。
水前寺 それ、もう何十年も「美空ひばりとの確執」って書かれているのね。実際は違うんだけど‥‥。
──当時、謝罪会見を開く事態になりましたが、あらためてどんな真相が?
水前寺 あの年のひばりさんはもちろん大トリで、長谷川一夫さんの踊りをバックにして歌うという演出だったんです。その曲紹介を間違えてはいけないだろうということで、白組司会の宮田輝アナウンサーがおやりになられたと、そういうことです。
──では、不仲ということもなく?
水前寺 ひばりさんは雲の上の存在ですから。ちょっと声かけられただけで天にも昇る気持ちでした。なので、いつまでもネットに確執と書いてあるのは削除してもらいたい(笑)。
──計4回の紅組司会でしたが、印象に残っている場面はありますか?
水前寺 79年は司会のほうに重点を置きたいと思って、出演者の方々との面会を入念にやりました。そしたら森昌子ちゃん、桜田淳子ちゃん、山口百恵ちゃんがトリオでやって来て「心配しないでください、ちゃんとやりますので」と言ってくれたの。あれはうれしかったですね。
──翌年に引退する百恵は、これが最後の紅白でしたね。そしてみごと紅組が勝ち、全員から胴上げされたシーンは紅白屈指の名場面と呼ばれています。
水前寺 これは今の人たちにも思ってていただきたいんですけど、紅白は「合戦」なんです。絶対に紅組が勝つんだという思いでやってきました。
──司会だけでなく、チームキャプテンも何度か経験されていますよね。
水前寺 応援に回る時は、なるべく歌の出番を早くしてくださいってお願いしたの。そうじゃないと後半は声がかれてしまうから。
──なるほど。そして83年には、ついに紅組のトリにも選ばれた。
水前寺 長らく病床にいた父が、この年の11月20日に亡くなったんです。実はトリの内定は聞いていたけど、当時は家族にも漏らしてはいけないというルール。ただ、もしお父ちゃんに「トリだよ」って伝えたら、大みそかまで持ちこたえたかもしれない‥‥。
──連続22回の出場が、87年の落選でとだえてしまいましたが。
水前寺 ちょうど新曲のレコーディングをやっていて、レポーターの方に「落選ですが」と聞かれて、私、ちっとも悲しくなかったの。報道陣に「知ってる? 今、レコーディングしている曲のタイトルは『今日から一歩』なのよ」って言ったら、ドッと笑いが起きて。紅白には本当に感謝しかありません。
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