社会
Posted on 2015年03月11日 13:00

フェアレディZの父「片山豊」氏の自動車人生105年

2015年03月11日 13:00

20150312n

 2月23日、新聞朝刊の片隅に〈フェアレディZの父死去〉とベタ記事が載った。日米の自動車文化を発展させた功績をたたえ、日本人4人目の米国自動車殿堂入りした偉人にしては寂しすぎる扱い。その理由とは。

 自動車評論家の国沢光宏氏が語る。

「片山豊といえば、日本では『Zの父』という評価だが、そもそも日本車がアメリカで売れるようになったのは片山さんのおかげです。その意味では本田宗一郎氏と同じぐらいの功績がある人だと思います」

 片山氏は1935年(昭和10年)に日産自動車に入社し、戦後の復興期に宣伝マンとして日本初の自動車ショーを日比谷公園で開催したり、豪州の自動車ラリーにスタッフとして参戦、日本車を初優勝させ、国産車「ダットサン」の存在を広くアピールしたアイデアマン。が、その華々しい活躍の見返りに会社が命じたのは「アメリカ行き」。

「私が30年前にこの仕事を始めた頃も日産は片山氏に対し厳しいネガティブキャンペーンを張っていた。要するに湘南生まれの慶応ボーイという明るい人柄で日本初のモーターショーを立ち上げるなど日の当たるところを歩きすぎ、社内ではやっかまれたということです。それで『アメリカで車売ってこい』となった」(前出・国沢氏)

 晩年の本人も「実際はテイのいい島流しだった」と語っているとおり、当時は、自動車王国・アメリカで日本車が売れるとは誰も考えなかった時代である。しかし片山氏の逆襲はそのアメリカ西海岸から始まった。

「車が壊れても部品がいつ来るかわからない、故障しても保証しない‥‥などアメリカの自動車メーカーにユーザーは不満を抱えていた。そこでまず片山さんは、売りっぱなしではなく喜んで修理し、部品が翌日には届くなどアフターケアのシステムを作った。同時に、アメリカ向けの車を作らなければいけないということで『ブルーバード510』を発売し、現地で受け入れられた」(前出・国沢氏)

 その第2弾が「ダットサン240Z」、日本名で初代「フェアレディZ」だった。発売当初から受注が追いつかないほどの売れ行きで販売台数140万台を超す大ヒットとなったのだ。

「片山さんは、誰でも買えるような格好いいスポーツカーというコンセプトで『Z』を企画した。しかも英国の『ジャガー』の3分の1ほどの価格でアフターサービスも充実していた。日産がこの2台でアメリカ進出に成功したことで、日本の他メーカーも追随したんです」(前出・国沢氏)

 もっとも、片山氏はこれだけの功績を残しながら役員待遇もなく77年に定年退社。その後、日産が90年代に経営破綻寸前となり、96年、「Z」は生産中止となった。が、片山氏が90歳の時に転機が訪れる。日産の再建を旗印に就任したカルロス・ゴーン社長と面談し、ニュー「Z」の復活の約束を取り付ける。そして02年、「ニューZ」の開発アドバイザーとして日産相談役に返り咲いたのだ。

 晩年、片山氏は「Z」愛好家のイベントにも参加したという。今回、全国のZオーナーが本誌に、哀悼のコメントを寄せてくれた。いくつか紹介すると──、

「7年前の宮城のイベントでは『軽くてワインディングロードをひらひら楽しく走れる車が理想だ。若者が買える車じゃないとダメ』と話してました」(山形)

「Zの魅力はズバリ非日常性。もっと早く功績をたたえられるべきでした。『快走』と書かれた片山さんの色紙は大事にとってあります」(静岡)

「自動車は『自働車』、つまり車は乗せてもらうのではなく(にんべんが示す)『人間』が『動』かすものであれ、と言ってました。色紙には『快走』以外にもまれに『快眠』とか『快便』と書き、長生きの秘訣も明かしていました」(栃木)

 戦時中、アルファベット最後の文字「Z」の旗は「あとのない最後の攻撃」を意味した。享年105。まさに「大往生」である──。

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