今場所、大関獲りにチャレンジする稀勢の里を擁する鳴戸部屋で、鳴戸親方(59)=元横綱隆の里=の度を越えた暴力や、体重を増やすため弟子の隆の山にインスリンを頻繁に注射したとするドーピングの疑いが持ち上がっている。
鳴戸親方といえば、糖尿病を克服して横綱を張った苦労人。「おしん横綱」と言われた人物だ。部屋を興してからも、若の里、隆乃若、稀勢の里を育て、とりわけ今場所は稀勢の里の大関獲りの大事な場所だけに、このスキャンダルは痛い。
日常的な暴力やインスリンの強制注射疑惑を指摘した週刊誌記事をきっかけに、日本相撲協会は10月27日、鳴戸親方と隆の山を個別に呼んで、事情聴取した。放駒理事長(元大関魁傑)は、
「今後も調査を続け、処分は理事会で決める」
としている。
もろもろの不祥事で、五月場所を技量審査場所に追い込まれた相撲協会としては、新たなやっかいごとに頭を抱えていることだろう。 相撲関係者が言う。
「あの部屋はガチンコ力士ばかり。稽古もよくするが、部屋はまるで戦中の日本のような沈鬱な雰囲気が漂っている。原因は親方です。相撲部屋は黒いカラスも親方が白いと言えば白くなると言われますが、あそこはそれを地で行っている」
こんなことがあった。親方は弟子に注意する際、自分が見たテレビドラマを引き合いにして、延々と説教するという。
「みんないい汗をかいているのに、それを中断してやるものだから、せっかくの稽古が台なしになる。通信社がそれを記事にして配信したら、ある地方紙が掲載した。後援会の一報で知った親方は激怒して地方紙に抗議したが、通信社の配信と知って今度は猛然と通信社に抗議した。あまりの剣幕に、社では今後このような記事は掲載しないと謝罪したそうです」(スポーツ紙記者)
4年前の時津風部屋の暴行致死事件を受けて、相撲界では行き過ぎた体罰をしないことを申し合わせたが、鳴戸部屋ではどこ吹く風。チャンコの味が薄いと弟子の頭が割れるまで角材で殴ったり、大関候補だった若の里をスコップでぶん殴り、5針も縫うケガをさせたというのだから、尋常ではない。5年で20人以上の弟子が夜逃げ同然に〝逃亡〟したという。 相撲ジャーナリストの中澤潔氏が言う。
「鳴戸親方は土俵の鬼の旧二子山イズムを継承するのは自分だと自負しています。稽古に邁進し、弟子には体でわからせる。しかし、いくら何でもちょっとやりすぎですよ」
実はこんな話もある。
「弟子が遊びほうけないよう独身者の預金通帳をおかみさんが管理しています。そのため、弟子は金が必要になると、おかみさんに言って下ろさなければならない。いくら何でもこれではオフの時間、自分のやりたいこともできず、鬱積が充満してしまいます」(前出・スポーツ紙記者)
報道では、部屋付きの行司の男色説まで指摘されているが、自分で自分の金が自由にならないのでは男色に走るのも無理はないかもしれない。
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