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堂林翔太擁した中京大中京が夏の甲子園最多優勝を果たすまでの「名門の軌跡」

 夏の選手権で最多優勝7回を誇る高校は、愛知が誇る名門・中京大中京だ。同校は春の選抜でも県内のライバル・東邦と並ぶ最多タイ、4回の優勝を果たしており、春夏合計11回の甲子園優勝は他校を圧倒的に離しての1位だ。

 夏の最初の優勝が1931年第17回大会。初出場で初優勝を飾り、ここから選手権史上唯一となる大記録・夏3連覇への道が始まることとなる。中心にいたのがエース・吉田正男(明大ー藤倉電線)だった。

 当時まだ校名が中京商だった同校は31年に夏の甲子園初出場を果たし、初戦で早稲田実(東京)相手に9回裏、4‐3と劇的逆転サヨナラ勝ちを収めると2回戦は秋田中(現・秋田)に19‐1と大勝。準々決勝の広陵中(現・広陵=広島)には5‐3、準決勝の松山商(愛媛)に3‐1と競り勝ち、決勝戦へと駒を進める。決勝は嘉義農林(台湾)に4‐0と快勝。まずはV1を達成する。

 翌年の第18回大会は高崎商(群馬)戦を5‐0、長野商戦を7‐2、熊本工戦も4‐0と余裕で勝ち進み、決勝戦へと進出。この春の選抜準決勝で延長10回のすえ、2‐3と惜敗した松山商(愛媛)との再戦となった。雪辱を期す吉田は松山商打線を8回まで無得点に抑え、攻撃陣も3得点。3‐0とリードする展開だったが、9回表に松山商打線の猛反撃にあい、一気に追いつかれてしまう。だが、松山商のエース・景浦将(元・阪神)が足に打球を受けて降板するアクシデントを突き、延長11回裏にサヨナラ勝ち。選手権V2を成し遂げた。

 そして迎えた33年第19回大会。吉田は初戦の善隣商(朝鮮)相手に夏の大会史上7人目となるノーヒットノーランを達成(与四死球1、14奪三振)。11‐0の大差で下すと、2回戦の浪華商(現・大体大浪商=大阪)相手に3‐2で競り勝ち、ベスト8へと進出。準々決勝ではのちの初代ミスタータイガース・藤村富美男(元・阪神)がエースの大正中(現・呉港=広島)との投げ合いを吉田が制し、2‐0の完封勝ち。ついにベスト4進出である。

 そしてこの準決勝の明石中(現・明石=兵庫)との一戦が、現在までも語り継がれる大激闘となる。延長25回にも及ぶ大投手戦である。実は明石中にはこの春の選抜準決勝で0‐1の完封負けを喫しており、その雪辱戦でもあった。結果は0‐0で迎えた延長25回裏に中京商が無死満塁からボテボテの二塁ゴロでサヨナラ勝ち。吉田は4時間55分にも及ぶ死闘で25回、336球を投げ完投。被安打8、19奪三振で完封勝利を収めたのだった。

 この翌日の決勝戦でも吉田は鉄腕ぶりを発揮。平安中(現・龍谷大平安=京都)に1失点の完投勝ち。1回裏に奪った2点を守り切り、ここに夏の選手権史上初、現在でも唯一となる3連覇を達成したのであった。なお、吉田の春夏通算23勝は甲子園最多勝である。

 この後、同校は37年第23回大会でエース・野口二郎(元・阪急など)が5試合でわずか4失点の快投を見せ、4度目の優勝を果たす(翌年春も優勝し、史上2校目の夏春連覇達成)。戦後は54年第36回大会で左腕の中山俊丈(元・中日)を擁し5度目のV。さらに66年第48回大会ではエース・加藤英夫(元・近鉄)を中心に史上2校目となる春夏連覇を達成した。

 その後は甲子園優勝から遠ざかっていたが2009年第91回大会、エースで4番の堂林翔太(広島東洋)が大活躍。43年ぶりの夏制覇をもたらした。この優勝で広島商と並んでいた夏の優勝回数6回を抜き去り、歴代単独最多優勝となったのである。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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