C 今回、一番の被害者は宮川大輔でしょう。最後まで「祭り男」を演じきったおかげで、結果的にヤラセの片棒を担ぐことになったわけだから。
B 放送では「ラオスの橋祭り」のセットを見て、つい「『風雲!たけし城』みたい」と発言してたけど、この期に及んでさすがに「アカン」と撮影中止なんてできっこない。
D 「イッテQ」じゃなくても、芸人が仕事を投げ出すなんてできないよ。報道を受けて、共演者の出川哲朗が「海外で熱湯と聞いていたのにぬるい時もある」と宮川をフォローしていたのがすばらしかった。
C そう。「熱湯風呂」だって芸人のリアクションを楽しむもので、本当にヤケドする温度の風呂に入れる必要はないわけだから。
A 確かに実際に熱湯じゃなくても、目くじらを立てるような話じゃない。
C でも、そのへんのサジ加減がわからなくて、本物の熱湯を用意しちゃって怒られたADがいたけどね(笑)。
B 「熱々おでん」だって別に芸人を病院送りにするのが目的じゃないしね。湯気が多く出ているように見せるテクニックを使ってる。
C そう。激辛のタバスコを飲む罰ゲームだって、トマトジュースを足して薄めたりする。あとはタレントの芸達者ぶりに任せると。
B バラエティー番組だと占い師をでっち上げることもちょいちょいあるよね。
C 占い師自体は本物だけど、「トイレットペーパー占いをしているということで出演してください」って風変わりな占いをするという設定で引き受けてもらう。
A 占い師というより便利屋みたい。催眠術とか霊能力もヤラセくさいけど。
C 被験者が芸人だったら濃厚でしょ。催眠術師が「レモンをかじっても酸っぱくない」ってやっても、実際には当然、酸っぱいんだよ。それでも芸人たちはアイコンタクトして「酸っぱくない!」って。その耐えてるリアクションがおもしろいんだから、問題ないよ(笑)。
D ドッキリ企画だって一種のリアクション芸だよね。タレント側も織り込み済みで、この手の番組の常連の菊地亜美なんかは、いつどこでダマシが来るか、野性のカンでわかるみたい。いつもは一緒に乗ってこないマネージャーがエレベーターに乗ってきて「あ、忘れ物があったから、先に行ってて」とか言ったりするとピンと来るんだって。それでもダマされた振りをして、リアクションするために、その時点でおもしろいヘン顔の準備をしているんだって。これは立派な芸だよ。
B 知識を競うクイズ番組ではありえないけど、バラエティーのクイズ番組では番組を盛り上げるために答えを教えておくということが普通にある。マネージャーに、それとなく問題と答えのヒントやキーワードを伝えるんだよ。特定のタレントが勝ったほうが盛り上がることがあるからね。
D 芸能人が出ている「クイズ番組」は解答まで全て台本に沿うケースが多々あるよ。進行どおりに優勝しても出演ギャラのみで、優勝賞金はダミーってこともね。
B 以前、プロ野球の大物監督の夫人が解答者として出演したことがあって、制作サイドはその人に勝たせたかったの。だから監督夫人なら誰でもわかるような問題を作ったんだけど、念のために出演前に問題を教えたら、「三冠王」が何か、理解してなかったんだよね。
C こちらが指示しなくても、わかってる芸人さんは暗黙の了解でボケて間違えてくれるから、結果的に勝たせたい人が勝つようにはなるんだけどね。番組としては、そういう「安全な人」を解答者に入れることも必要なんだ。
D 芸人さんによっては、答えではなく「ボケを教えてほしい」という要求もある(笑)。二重のヤラセだよ。
C でも優秀な芸人さんだと、放送作家が例題として事前に用意したものより秀逸なボケをかましてくれるから助かるんだよね。その点、一般素人ではこの技が効かないから面倒なんだ。
B ある素人対決番組で、あまりにマニアックな調味料がテーマの企画が通って出演者が足りなくなった。結局、ツテをたどって地下芸人に出演を依頼することになったんだよ。もちろん、その分野の猛者として予備知識をつけるため、あらかじめ50種類の調味料と想定問題を送っておいた。だから予選はほぼ全問正解で決勝進出間違いなしと思ったのに、最後の調理実演で黒こげを連発してみごとに落選だよ。
A アンチョコの一夜漬けでチャンピオンになれたら苦労しないよ。
<座談会メンバー>
A:民放局情報番組ディレクター/B:制作会社スタッフ/C:放送作家/D:芸能プロ幹部