社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「寒い季節の室内外の温度に注意すべし。脳や心臓の血管の収縮で脅かされる命」

 今年は猛暑が厳しい季節でしたが、11月半ばになり、明け方の気温が10℃を下回る地域も出てきました。これから冬に向けて、インフルエンザの流行や凍結した道路での転倒など、1年で最も健康に気をつけねばならない季節です。特に注意すべきは急激な寒暖差がもたらす諸症状でしょう。

 さっそく、ここで問題です。冬に多い心筋梗塞、脳梗塞、脳出血のうち、最も気をつけるべき病気はどれでしょうか。

 まず脳梗塞ですが、その要因となるのは動脈硬化です。動脈硬化は糖尿病や高血圧、心臓病などの生活習慣病により、血液の流れが低下。それが引き金になって起きるので、生活習慣が大きな要因と言えます。それには糖尿病や高血圧を悪化させないことが肝心。もちろん大病で、怖い症状ではありますが、心筋梗塞や脳卒中と比べて突然死に至る確率は低いと言えます。

 脳梗塞以上に怖いのが、ヒートショックです。これは急激な寒暖差で血圧が急上昇することによる突然死です。例えば入浴の際、寒い脱衣所から温かい湯船につかった際に血圧が急激に変化して、心筋梗塞を招いた結果、浴室で亡くなるというのは高齢者に多いケースです。急激な血圧上昇が心臓の血管(冠動脈)に負担がかかり、不整脈を合併して突然死に至ることがあります。入浴しようと風呂に入りヒートショックで亡くなる人は10年前と比べて7割も増加しているそうで、「私は大丈夫」などと過信してはいけません。

 心筋梗塞と同様に、脳出血も怖い症状です。脳には多くの栄養と酸素が血液によって運ばれていきますが、動脈が詰まって血液が行き届かなくなると、脳神経に障害が起こり、脳梗塞に至ります。脳梗塞なら一命を取り留めるケースも少なくないですが、脳の血管が破裂してしまうと、即死の可能性がかなり高くなります。

 血圧は冬に高くなる傾向にあります。夏場は何もせずとも血管が開いて血圧も低くなりますが、逆に冬は体の大事な熱を逃がすまいと血管が締まる=圧力がかかるため、血圧も高くなりがちです。そのためヒートショックを起こしやすく、最悪の場合は高血圧性脳出血となるのです。

 さらに気をつけてほしいのが、寒い日の飲酒です。暖かい居酒屋でお酒を飲むと体が温まり、血管はムクムクと広がっていきます。いい感じで酒に酔い、コートを脱いだまま外に出ると、気温の変化で血圧が急激に上がり、開いている血管が締まって「ヒートショック」を起こすケースがあります。サウナのあとに水風呂に入るのも同じ理屈で高齢者には危険な行為ですので注意してください。

 夜中に目覚め、トイレに向かう時に倒れるケースもあります。これは布団の中で温まっていた体が、寒い廊下へ急に移動するため、血圧が急激に高まって起こります。寝る前に、廊下に置いた温風ヒーターのスイッチを入れておくのは一つの予防法です。現実的に、枕元に尿瓶を置いておくのも一考です。

 寒暖差が激しい状況ほど心臓への負担がかかり、ヒートショックを起こす確率は高くなります。逆に温度差が小さいほど健康は保たれますので、なるべく寒暖差が大きくならぬよう、ふだんの生活から心がけてください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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