エンタメ
Posted on 2013年04月02日 09:54

ザ・ベストテン「視聴率40%の伝説」(4)「聖子に用意した母の弁当箱」

2013年04月02日 09:54

70年代とは、各テレビ局に歌番組が割拠していた時代だ。それぞれの特性を生かした番組作りを競ったが、後発に当たる「ザ・ベストテン」だけが社会現象となる視聴率を獲得したのはなぜか? その答えの一つに、斬新でありながら、歌手との信頼を損なわない「演出」があった。

「その飛行機、速度を弱めていただけませんか!」

 番組の長い歴史でも、上位に位置するエピソードであろう。松田聖子が2曲目の「青い珊瑚礁」(80年7月)で初めてベストテンに入った80年8月14日のことだ。

 8位にランクインした聖子は、9時を少し回ったあたりに羽田空港に到着。タラップを降りた聖子が、エンジンのほうに移動して飛行機を背にして歌う

──そんな一連の流れを生中継で提供するプランだった。

 ところが、飛行機が予定より5分早く到着しそうになり、担当ディレクターが航空会社に持ちかけたのが冒頭の言葉だった。公共の輸送機関を前に大胆な提案だが、その熱意が“神風”となったのか、飛行機は定刻に到着し、狙いのままの映像となった。

 この場面を身震いしながら見ていた若手ディレクターの遠藤環は、それから5週後に1位となった「青い珊瑚礁」の演出を担当する。感動の場面を倍増させるには、やはり聖子を支えた母親の存在だろうと考えた。

「スタッフに日帰りで福岡へ飛んでもらい、お母さんの手作り弁当を受け取ってUターン。お弁当箱は聖子が小さいころから慣れ親しんだものでした」

 聖子には内緒で、黒柳徹子が歌の直前に弁当箱を差し出す。その瞬間、あの有名な「お母さ~ん!」のフレーズが飛び出している。

 こうした演出陣と同様に、美術スタッフも短い日数のうちに最高のセットをこしらえる。チーフとして多くの美術デザインを担当した三原康博が言う。

「本番の前の日に、明日は雪が降りそうだって予報が出ていた。そこでふと、オープニングにペンギンを使いたくなってね。司会の久米宏に似せてペンギンに蝶ネクタイを着けさせようって。TBSの屋上からの中継だったけど、反響あったのはうれしかったね」

 三原は曲よりも歌詞からヒントを得る。庄野真代の初めてのランクイン曲である「飛んでイスタンブール」(78年4月)では、冒頭のフレーズに注目した。

〈いつか忘れていった こんなジタンの空箱〉

 三原の脳裏に「アラジンと魔法のランプ」の映像が浮かんだ。

 ジタンというタバコの銘柄を表すロゴが背景にあり、庄野自身は立体の箱の中に入れたらおもしろいだろう。上部からおおった黒い幕が開き、歌の最後には流れ星もまたたく幻想的な演出となった。

 この1曲で人気歌手の仲間入りをした庄野は、当時のニューミュージックシーンには珍しく、積極的なテレビ展開をした。

「それまでは『カットされた1分や2分では歌の魅力を伝えられない』というのがテレビを断る常套句だったけど、私は1分、2分で伝えられなかったら3分でも同じという考えでした」

 庄野にとって5枚目のシングルであり、作曲に筒美京平を起用した“勝負曲”となった。まず九州や北海道の地方都市から火がつき、発売からジワジワとチャートを上げ、4カ月後の8月3日に9位で初登場を飾る。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年09月14日 11:30

    AIは本当に人類を終わらせるのか。専門家のとある主張が世界を震撼させている。その「AI終末論」は、AI開発企業アンソロピックに勤めていた元研究員、ジェイコブ・コクソン氏によるもの。Xで「AI研究関係者の多くが、AIは今後10年以内に人類を破...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年09月17日 07:15

    20世紀最大級のミステリーと言われてきた、イギリス・スコットランドのネス湖に生息するという未確認動物(UMA)の「ネッシー」に、再び熱い視線が注がれている。いったいなぜか。一時期は目撃情報が激減し、専門家からは死亡説や、人間の活動を警戒して...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク