芸能
Posted on 2020年04月04日 17:57

松田聖子 デビュー40周年の全秘話(2)バイオリンのスラーを生かせ

2020年04月04日 17:57

 当時のアイドルにはキャッチフレーズがつきもの。CBS・ソニーで宣伝を担当した西岡明芳が当初考えたのは「抱きしめたい!」だった。それが最終的に「抱きしめたい! ミス・ソニー」となったのは、社内で聖子を推す声が増えてきたからだ。

 そこに再びアクシデントが襲う。デビュー曲「裸足の季節」は資生堂とのタイアップが決まり、歌詞と商品名がリンクする「エクボ洗顔フォーム」のCMにも出演する予定だった。立ち会った西岡が回想する。

「CM用のフィルムも撮っていたし、十分にかわいく映っていたよ。しかし残念なことに、彼女にはエクボがない。そのためクライアントが難色を示し、別の子が出演することになった」

 西岡たちは、あやうく曲まで消えそうになったのを、再三の説得でなんとか残してもらった。その結果、歌声だけは大量にオンエアされたのである。西岡は曲名にちなみ、裸足でプロモートに駆けずり回ったという逸話を残している。

 デビュー曲を手掛けたのは、新進の作曲家・小田裕一郎だった。小田は、聖子の印象をこう語った。

「高音部が豊かな声量できちんと出るのはもちろん、低音部の発声もすばらしかった。低いパートって、ともすれば宝塚歌劇のような仰々しい歌い方になったりするけど、彼女はハスキーで魅力的な声が出た」

 そして小田は、聖子のセールスポイントとなりうる「聖子節」の完成に取りかかる。

「バイオリンやフルートには『スラー』という演奏記号があって、いくつかの音符を弧でくくり、音と音をなめらかにつなげる。イメージとしてそんな歌い方をやらせてみたんです。ひとつひとつの音に対し、両側からすべらせながら歌うという感覚。これができることによって、例えば3作目の『風は秋色』に『あなたのせいよ』って歌詞があるけど、これが『~SAY YO』と洋楽的に聴こえる効果をもたらした」

 圧倒的な聖子の音感がそれを可能にした。ところが、そんな聖子が音を上げた瞬間がある。4枚目のアルバム「風立ちぬ」(81年10月)だ。A面を当時「A LONG VACATION」が大ヒット中の大瀧詠一がプロデュースしたことで話題になったが‥‥、若松が振り返る。

「正直、大瀧さんのメロディーは最後まで決まっていなかった。だからレッスンさせて聖子の歌声を聴きながら、どんどんと曲調が変わっていく。これにはさすがの聖子も『もう大瀧さんの曲は歌いたくない』って珍しく弱音を吐いたよ」

 デビュー以来の過酷なスケジュールがピークに達したこともあり、聖子自身の声も疲れ果てていた。もっとも、シングルカットされた「風立ちぬ」は、そんな舞台裏を感じさせないほど完成度の高い楽曲に仕上がり、秋の名曲として今も親しまれている。

(石田伸也)

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2022年07月05日 17:58

    可愛さ余って憎さ百倍。いやはや、この2人のバトルは本当にすさまじかった。沢口靖子が主演したNHK連続テレビ小説「澪つくし」や、渡辺謙主演の大河ドラマ「独眼竜正宗」の脚本を手掛け、飛ぶ鳥を落とす勢いだった脚本家のジェームス三木氏。ところが19...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年07月31日 06:45

    堺雅人主演ドラマ「VIVANT」(TBS系)が3年ぶりの続編でも、圧倒的な存在感を放っている。第2シーズンの初回放送は、平均世帯視聴率18.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録。放送中にはXで世界トレンド1位になった。前作は2023年...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    芸能
    2026年08月06日 17:00

    2024年7月に停車中のロケバス内で共演者の女性に性的暴行をしたとして、不同意性交と不同意わいせつの罪に問われたのは、元お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二被告だ。その第6回公判が8月5日に東京地裁で開かれ、検察側は懲役7年を求刑。...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/8/4発売
    ■690円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク