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殿は「遊ぶ」といった言葉を実によく使います。
以前、ある日のスケジュールが〈ホテルで取材を受けたのち、移動してレギュラー番組収録のためテレビ局に入る〉といった流れだったのですが、ホテルでの取材がことのほか早く終了し、局への入り時間まで、まるまる2時間程空いてしまったことがありました。この時、マネージャーが「殿、いったん帰られますか? それとも、どこかで時間を潰しますか?」と確認すると、「2時間か? こりゃまた、見事に半端だな。まーいいや、めんどくせ~から今から入って、楽屋で遊んでるわ」と返していました。
で、殿の口から出た「遊び」の中でも、ある意味、究極パターンは“まぼろしのラスベガス旅行”です。
説明します。15年程前、浅草「ロック座」の斎藤ママが「今年の正月は殿と弟子を連れて、みんなでラスベガスで過ごす!」と、大変豪快な宣言をされ、殿と弟子10名で、年末から正月明けまでの8日間、たっぷりとラスベガスへ行く計画が浮上したのです。その時、殿から「どうせなら、ロスまで飛行機で行って、ロスから、いかにもアメリカ映画に出てきそうな銀色のバスをチャーターして、みんなでワイワイ遊びながらラスベガスに入るか!」と提案がありました。
ちなみに、この時のラスベガス旅行は、日本を旅立つ当日、飛行機に乗る4時間前に殿から「俺は行くのやめたから、お前らだけで楽しんでこい!」といった電話が入り、まさかの“当日ドタキャン”が勃発! その結果、殿を日本に残して、斎藤ママとまったく売れていない弟子10名とでラスベガスへ行くという、なかなかの非常事態になったのです。で、当然ですが、殿が言い出した「ロスからベガスまでの貸し切りバス旅行」も決行され、殿不在の車内はなんとも静かなものとなったのでした。
ただし、ベガスへ入ってからは博打とショー(シルク・ドゥ・ソレイユ他)を心行くまで堪能し、恐ろしいほど娯楽まみれの、最高の旅となりました。
で、殿が使う「遊び」は、打ち合わせの時などにもよく発動されます。
12年程前、「ニュースキャスター」立ち上げの打ち合わせの中で、殿は「あれだな。お天気コーナーも遊んじまうか!」と提案し、ひと頃、毎回、最後にお天気お姉さんがボケるという、今思えば実に画期的な遊びをやっていたことがありました。具体的にはこんなやり取りです。
お天気お姉さん たけしさん、今週は暑くてとても夏らしい日が続きました。
たけし うん。
お天気お姉さん 夏といえば、たけしさんの映画「夏次郎の菊」ですよね。わたし、夏次郎さんが大好きで、5回は観てます。
たけし 「菊次郎の夏」だよ。お前、観てないだろ!
一時期、他局のニュース番組のお天気コーナーでも、明らかにこういったやり取りを参考にして実践していた番組がありました。とにかく殿は、どの場面でも常に遊びを入れてきます。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!
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