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記事全文を読む→飲み屋の主人に胸を揉まれながら…極道に見せつけた江波杏子31歳の「喪失」
その是非をめぐって国論が二分する中、安倍元総理の国葬が強行された。
明らかになった分断は、この国をどこに連れ去るのか。混乱の未来図ははたして、いかなる像を結ぶのか。2022年秋の憂愁は深く、なお「臨終」は、傍らに横たわることを止めない。ならば、著名人の墓碑銘を紐解くのも悪くはないだろう。
18年10月27日。江波杏子が死去。享年76。
前日に呼吸の不調を訴え、都内病院に救急搬送。翌日の訃報であった。死因は肺気腫の急性増悪。肺の機能が衰える慢性閉塞性肺疾患だが、別名「たばこ病」と言われる。20年以上の喫煙歴で発症しやすくなり、患者の8割は喫煙者とされる。「笑点」永世名誉司会・桂歌丸の死因でもある。
さて、江波といえば、壺振りの女賭博師が当たり役だが、「キネマ旬報ベスト・テン」で主演女優賞を受賞した作品が「津軽じょんがら節」(73年)だった。岸恵子と萩原健一が共演した「約束」(72年)、高橋洋子と秋吉久美子のデビュー作でもある「旅の重さ」(72年)を手がけた斎藤耕一監督作品。ATG(日本アート・シアター・ギルド)作品ながら、ATG系の劇場に続いて拡大公開され、「キネマ旬報ベスト・テン」日本映画第1位、日本映画監督賞に輝いた傑作である。
舞台は津軽。さびれた海辺の村。冬を前に、ゴォゴォと波音と風音が吹きすさび、津軽三味線が耳に離れない冒頭のシーン。
江波が演じるのは、ふるさとの村に舞い戻るオンナ。42年生まれの江波は撮影当時、31歳だが、とてもそうは見えない凄みと深みを漂わせる。故郷に連れてきたのは、組に追われる若い極道である。「パチンコしてぇ~」と無聊をかこつ若い男に「バスで2時間の五所川原に、パチンコもボウリングもある」と諭す江波。極道は25歳。ふるさとのない「東京を一歩も出たことのない」男だった。
2人で暮らす海沿いの小屋から、村に出歩く若い男は「ほかから来た人」であり、稀人(まれびと)である。
若い男は、目が見えない一人の少女と知り合うことになる。少女の名はユキ。「神話」の始まりである。
「どっから来たの? 東京?」と、ユキが若い男に尋ねるが、男は「ナホトカに行く船乗り」と嘯くのだった。いつしか心通わせる2人だが、それに気付く江波がいて…。
江波は飲み屋の主人との関係を、若い男に見せつけるのだった。飲み屋の主人に胸を揉まれながら、若い男と一緒に村から出ていきたい江波は、
「あんたが一緒にこの村を出てくれないんだったら、あたし、何するかわかんないわよ」
と、男に告げるのだった。その時の江波の表情は素晴らしく美しく、凄絶である。
「こんなどうしようもない土地」と号泣する江波は、ふるさとを喪失する哀しみを噛みしめるのだった。70年代、日本全土でふるさとを喪失しつつあった。
「津軽じょんがら節」で描かれる70年代のニッポン。村で唯一の飲み屋に通う、失業保険で暮らす男たち。暇を持て余し、昼は花札に興じる日々。出稼ぎまでの、束の間の感興。村に産業はない。
足が悪く、出稼ぎにも行けないあぶれ者。客と店の金を持ち逃げする、流れて来た店の雇われ女。若い者が東京に去り、人手がなく、漁がおぼつかない老漁師。
それは、日本のそれぞれのふるさとに、同じように点在したのである。
そして、ユキの家は貧しく、「瞽女(ごぜ)さんになりてぇ~」と夢を語るのであった。瞽女とは、門付を生業とする盲目の女旅芸人であり、津軽三味線とともに東北の海辺の村を歩くのである。
圧倒的な「不幸」が全編を覆い、時代から取り残された海辺の村を彩る点景の数々が、モノクロームな土俗の風景の中で、鮮やかに描かれていく。
壊れていく「ふるさと」が、全国を侵食した70年代だが、ふるさとを持たない若い男は、土俗の風景から「日常」を発見し、生きていこうとするのである。
「あんた、よかったわねぇ、ふるさとが見つかって」
伴走者は、江波ではなかった。江波は決意とともに、故郷を捨てることになる。一歩を踏み出す江波が、まことに美しい。必見の作品である。
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