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元女子バレー・大山加奈が告発した「双子ベビーカー都営バス拒否事件」の大間違いな言い分

 元女子バレーボール日本代表の大山加奈さんが炎上中だ。発端は11月7日、大山さんと双子を乗せたベビーカーが都営バスに2台立て続けに乗車拒否されたと、自身のブログに書いたこと。SNSやポータルサイトのコメント欄でも賛否が分かれる騒動となり、東京都は11月8日に謝罪した。

 だが、ちょっと待ってほしい。有名人が文句を言えば、すぐにお役所が謝罪する風潮はいかがなものか。

 実は今回問題となっている双子用ベビーカーがバス利用できるようになったのは、つい最近のこと。東京都交通局によれば、双子を持つ保護者からの要望を受けて、令和元年から都立病院の路線などで、安全実証実験を開始。3年間の実証実験を経て昨年6月、国土交通省は「保護者が安全確保をする、進行方向に向かって備え付けのテープで固定する、ほかの乗客と譲り合う」という条件つきで、双子用のベビーカーに子供を乗せたままの都営バス利用を認めた経緯がある。

 つまり昨年まで、双子用ベビーカーはバス乗車が禁じられていたのだ。今回、大山さんがブログ上で「スルーされた」と告発した運転手にまでは、周知徹底されていなかったかもしれない。

 大山さんが自身のブログに書き込んだ「(高齢)女性が手を差し伸べてくださり、この重いベビーカーを持ち上げてくれてなんとか降りることができました」は、国交省が定めた乗車ルールに違反。大山さんに非がある。

「ほかの乗客が手伝って当たり前」と思う保護者の、安全保義務を守らない利用者が増えて、乗降を手伝った乗客や乗せたままの赤ん坊を巻き込む事故が起きたら、3年間の安全実証実験に協力してくれた双子ママの善意もむなしく、国は再び、双子用ベビーカーや一人乗りベビーカーの乗車を禁止するだろう。

 双子の孫を持つ筆者の元上司、看護師長に感想を聞いてみると、次のように一刀両断。

「赤ん坊2人を連れた外出には、家族やベビーシッターを同伴させるのが常識。電車やバスの乗り降りの手伝いなんて、間違ってもお願いしない。今の時代、手伝うフリをして、赤ん坊2人を乗せたベビーカーをわざと叩き落とす人だっているかもしれないし。わざとでなくても、双子用ベビーカーは作りも頑丈で、赤ん坊が2人乗っているから、思っている以上に重い。ほかの乗客や子供がバランスを崩し、バスから転げ落ちてケガをするかもしれない。ほかの双子の親の肩身が狭くなるから、大山さんの非常識な発言は迷惑」

 しかも双子用のベビーカー、双子を前後あるいは上下に寝かせる幅50~60センチのタイプであれば、一人用と変わらず幅も取らないが、双子を横に並べるタイプのベビーカーは幅が110センチを超える。バスに乗り込まれると乗降口周辺の通路を遮り、足の不自由な乗客や視覚障害者がベビーカーに接触して転倒、ケガをする恐れがある。

 そして一人乗り二人乗りを問わず、ベビーカーは車いすに固定スペースを譲り、折りたたむとの決まりがある。

 例えばバス車内の車いす、ベビーカーの固定スペースに車いす利用者の先約、もしくは後から車いすの利用者が乗車してきた場合は、

「べビーカーは畳んで乗車していただくことになります。狭い車内ですから、譲り合いのご協力をお願いします」(東京都交通局)

 大山さんは「公共交通機関って誰でもいつでも利用できるものではないんですかね、本当にもっと優しい世の中にならないかな」とブログに書いているが、障害者への配慮や、車いすに乗車スペースを譲るフェアプレー精神と優しさはあったのか。

 ベビーカーや高齢者が利用しやすい、段差のないノンステップバスの運行本数は、まだ少ない。地下鉄の長い階段に、途中までしかない中途半端な駅のエスカレーター…小さい子供を抱えた母親にとって、公共交通機関利用は地雷だらけだ。そのひとつひとつを行政と公共交通機関、母親たちが話し合って、今に至っている。

 気に食わないことがあればブログやSNSで拡散、東京都に謝罪させる有名人マウントをとる前に、大先輩の双子ママたちのおかげでバスが使えるようになった、感謝の気持ちを忘れてはいけない。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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