政治

【ちょっとおかしな市議・区議たち】「談合不正」を市民に公開したら談合側に訴えられて家宅捜索「腐敗STOP」運動

 市役所のある東京都武蔵村山市の中心部は最寄り駅からやや遠く、隣の東大和市の西武線玉川上水駅に、わざわざ天目石(あまめいし)要一郎市議が車で迎えに来てくれた。市内を少し回ってから市役所で取材を受けたい、というのである。「外から来たお客さんに、ちょっとでも我が街を知ってほしい」との配慮なのだろう。その話しぶりは腰が低く丁寧で、とても強力な「敵」と戦ってきた「闘士」には見えない。

 彼の戦いの歴史は、大学時代から始まる。本人の談を聞こう。

「私がいた大学の自治会を新左翼系のセクトが仕切っていて、自治会費は彼らが勝手に

使ってたんですね。それで大学祭の実行委員会などで、何度も抗議しました」

 だがその悪習が収まらないまま、卒業。一度は広告会社に就職したものの、世の中の不合理を正したい気持ちは消えず、20代で新党さきがけから武蔵村山市議選に立候補して当選する。

 その後、一度は自由党から東京都議選に出馬して落選を経験したものの、長く武蔵村山市議として働いてきて最も力を入れたテーマが、業者らが密室で公共事業の価格を決め、市民を裏切る「談合問題」だった。

「初当選直後は、市の入札記録を調べようとしても、窓口に行って申請して出してもらわなくてはならなかったんです。やがてインターネットで資料が手に入るようになり、公共工事におけるカネの流れが見えてくるようになりました」

 調べていくと、武蔵村山市にとどまらず、自治体と公明党議員、建設業者が談合によって落札価格を決める、不当な入札が行われていたのがわかってくる。それをブログで発表すると、その建設業者の社員らから、内容を裏付ける情報がファックスで送られてくるようになった。

 それで談合をした側が処罰されて一件落着かと思いきや、事態はとんでもない方向へ。動いていたはずの警察の捜査が立ち消えになった代わりに、反対に「談合側」から名誉棄損で訴えられたのだ。

「いきなり自宅を家宅捜索されました。書類送検され、検事に3時間も罵倒されたり。ほとんど犯罪者扱いです。こちらもこの問題に熱中するあまり、選挙に力が入らなかったので、2011年の市議選は落選してしまった。生活費を稼ぐために、議員と並行して働いていた会社もクビです」

 落選については「自分の油断だった」と告白する。談合糾弾のブログは話題になっていたし、ネットでも自分はそこそこ有名になっていたので、選挙運動なしでも落ちることはないだろう、と勝手に思い込んでいたのだ。

 結局、起訴は免れたものの、次の選挙までの4年間は、知り合いの国会議員のポスター貼りやチラシ配りなど、アルバイトで生計を立てるしかなかった。

 2015年の選挙では返り咲き、その後、2度の選挙でも当選。2023年はトップ当選だった。より自由に動けるように、どの党にも属さない完全無所属になった。

「後援会を一度だけ作ったことがありますが、どうしても『カネを貸してくれ』とか『一

杯おごってくれ』とか、個人的な要望が多いんですね。大事かもしれないですが、私はもっと違う動きをしたかった」

 その後、後援会は作らず、もっぱら応援してくれる仲間たちとともに、談合問題をはじ

めとする市の不正のチェック役を担っている。

 最近でいえば、市内に11カ所しか投票所がないのに、なぜ都知事選で1台32万円以上する投票用紙の自動交付機を52台も購入したのか。都の予算から出たとしても、これは税金の無駄遣いであり、業界との癒着ではないのか、などといった主張を、ネット上や自ら発行する「腐敗STOP通信」などで繰り広げている。

 自身にとって、今の地位ほど心地よいものはない、と断言するが、

「国会や都議会を目指そうとしたら組織の看板が必要ですし、自然にいろいろな人に気を

使う『八方美人』にならなくてはいけませんよね。その点、市議ならば同じ意識をもっ

た仲間とだけでも当選できて、言いたいことが言える。それにいざ市議となったら、ど

んな主張でもなかなか圧力では潰せない。最近ではもう私のファンみたいな人たちが

いて、『こんなテーマは扱えませんか』って売り込んできたりします」

 どうやら「武蔵村山の名物男」になってしまったような感じだ。

(山中伊知郎/コラムニスト)

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