とにかく情報が少なすぎる。
欧米で広がる原因不明の子供の急性肝炎について、国内でも子供1人が死亡していたことが、国立感染症研究所の発表で分かった。ところが同研究所は、不幸にも亡くなった子供の国籍から基礎疾患の有無まで「患者のプライバシー保護」を口実に、いっさいの情報開示を拒否。国立感染症研究所の「情報統制」により、小さい子供を持つ親には不安の声が上がっているのだ。
同研究所によると、国内では2月16日までに162人が、この肝炎の疑いがある患者として報告され、そのうち1人が死亡、3人が肝移植をしたという。感染症専門医が憤激の声を上げる。
「英米の研究者が3月30日に科学誌『ネイチャー』で『ナゾの肝炎患者の多くは、アデノウイルスの随伴ウイルスに感染していた』との分析結果を発表しました。要するに、世界のどこかで変異を起こした新型ウイルス感染の可能性が出てきたということです。日本国内で亡くなった子供が外国人旅行客か、1年以内に日本に入国した在留外国人であるか、あるいはすでに国内に未知のウイルスが定着して一部の地域でクラスターが起きているか…それによって、小さい子供を持つ親御さんの心構えや感染予防策は全く違ってきます。ところが国立感染症研究所は患者のプライバシー保護を口実に、完全に情報を隠蔽した。3年前の新型コロナ上陸時にも、国立感染症研究所は新型コロナウイルスの遺伝子情報を、国内の研究機関に出し渋りました。そのせいで、日本は検査薬や新薬の開発が遅れたのです」
不気味な「子供の急性肝炎」が報告される前から、乳幼児が原因不明の肝炎や、肝移植が必要な胆道閉鎖を起こすことはあった。大人と比べて免疫機能が未熟で体の小さい子供は地面の粉塵や病原体を吸い込みやすく、大人なら無症状あるいは軽症で済むウイルスが原因で、肝炎を引き起こすのではないかと言われている。
新型コロナの自粛が明けてから、東京駅の構内や大阪の雑踏で、子供を地面に転がしてハイハイやゴロゴロさせている親御さんを見かけることが増えた。ナゾの肝炎を過剰に怖がる必要はないといっても、定期予防接種や食事前の手洗い、汚れた手をこまめに拭く、多くの人が集まる場所の地面に子供を転がさないなど、子供をウイルスから守るために必要最低限のことはしていこう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)