芸能

藤田まこと「30億円を返済したら次は3億円」という借金まみれ人生/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史

 私事で恐縮だが、筆者はテレビ朝日が以前放送していた「必殺」シリーズのコアなファンである。なのでBSでの再放送の際は、チェックが必須となる。

「必殺」で欠かせないのは、言わずと知れた「中村主水」だ。表の顔は「昼行燈」の町役人。しかして、裏の顔は凄腕の殺し屋。このなんとも言えない光と影のコントラストを、ものの見事に演じきる藤田まことのクオリティーの高さには、脱帽するばかりだった。

 藤田は喜劇役者からスタートし、テレビ創成期の1962年、最高視聴率64.8%を叩き出した「てなもんや三度笠」(テレビ朝日系)に出演。人気を不動のものとした後も時代劇、現代劇問わず、常に第一線で活躍してきた。

 そうした順風満帆な俳優人生とは裏腹に、私生活で最後まで悩まされたのが、巨額の借金だった。原因となったのは、夫人がバブル期に開業した飲食店などの失敗だ。当初、30億円あった借金は藤田の懸命の努力により、10年足らずで返済した。

 しかし、2008年には夫人に融資していた金融業者の管財人から、貸付金3億円の支払いを求められていた訴訟で、大阪地裁は藤田側に全額の支払いを命じるなど、常に借金返済がまとわりついていた。

 当時、取材したテレビ関係者は、こんな話をしてくれた。

「藤田さんは自身も幼い頃に実母を亡くした苦労人。だからこそ、家族はかけがえのない大きなものだった。だから3億円の支払い命令が出た時も、藤田さんはいっさい奥さんを責めなかった。人の悪口を言わず、大御所であっても腰が低い。それがスタッフから愛される理由でしたね」

 とはいえ、長年の心労があったのだろう。藤田は2008年2月、病魔に襲われる。検査の結果、食道ガンと診断され、5月には大手術が行われた。手術は無事成功。リハビリの甲斐もあり、同年12月13日、松竹京都撮影所で復帰会見に臨むことになった。

 公の場に姿を見せるのは4月以来初とあって緊張気味の藤田は、

「神様が『復帰第1作は中村主水がいいんじゃないか』と考えてくださったのではないか」

 と感無量。だが、8月末の退院時は、

「全く歩けず、点滴だけで2カ月と15日くらい生きていました。その間も絶対に復帰するんだという信念で、頑張ってきました」

 そして、大病を患ったからこそ演じられるものがある、と意気込んだ。

「違った面を見せたい。影のある主水をやってみたい」

 ところが2009年、慢性閉塞性肺疾患のため休養。2010年2月17日、大動脈からの出血により、大阪の病院で息を引き取った。享年76。最期まで夫人や家族に尽くした「ムコ殿」人生。そして文字通り、生涯を芸に生きた仕事人だった。

(山川敦司)

1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。

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