政治

武見敬三の厚労大臣就任で「悪徳医療制度」「救急医療崩壊」を食い止められるか

「日本医療界の天皇」と呼ばれた故・武見太郎氏の三男・武見敬三氏が第2次岸田改造内閣で、厚生労働大臣として入閣した。この露骨な閣僚人事で財務省や厚労省主導の医療改革は絶望的、岸田内閣の政治姿勢である「国民には増税、自民党支持層の医師会、歯科医師会、薬剤師会と高齢者にはバラマキ」で、我々の生活はさらに困窮していくことだろう。

 武見厚労相の父・太郎氏を知らない人のために説明すると、終戦まもない1950年代から日本医師会長、さらには世界医師会長を務めた。1961年には当時、懸案となっていた「国民皆保険」をめぐり、政府と日本医師会が紛糾。武見会長は全国の開業医に「一斉休診」を呼びかけた。

 開業医たちが診療ボイコットという実力行使に出た1961年以降は「アメ(政治献金)とムチ(診療ボイコット)」を使い分けた、太郎氏率いる開業医集団たる日本医師会と日本歯科医師会、日本薬剤師会の発言力は強大となり、御用議員が医療行政に影響力を持つようになった。

 つまり現在の「老人の診察代金はタダ同然」「クリニックや病院はヒマな老人のサロン」という歪んだ医療行政を生んだ戦犯が、太郎氏とも言える。1961年以降、「老人の診察代金はタダ同然」は日本医師会と自公政権の支持者である高齢有権者、双方の利害が一致する「医療政策」だからだ。

 その結果、令和の20代サラリーマンは病院を受診するヒマもなく、年額25万円以上の健康保険料を巻き上げられている(国民健康保険料が高い大阪府の場合は、40歳以上で年額約50万円)。

 そのくせ熱が出ても、今も殿様商売の高齢開業医に「発熱患者は診療お断り」と診療拒否され、薬局で市販の解熱剤を買うしかない。

 老老介護または独居の高齢者に至っては、もっと悲惨だ。かかりつけの開業医から診察、電話診療、往診を断られ、救急車を呼ぶ事態になっている。平時でさえ歩くのも困難なのに、熱が出て飲まず食わずのフラフラの高齢者を夫もしくは妻が抱き抱えながら、自宅から遠い病院を受診するなど無理。救急隊にパートナーを抱きかかえてもらわないと、病院受診もままならない。

 老人介護施設に入っていても、安心できない。介護施設と診療契約を結んでいる開業医、施設医は「新型コロナキットで陽性」が出ただけで119番を呼ぶ。施設に入っている高齢者の鼻の奥をグリグリし、119番を呼ぶだけなら看護師でも介護職でもできる簡単なお仕事なのに、コロナ陽性の高齢者を救急隊と大病院に丸投げしては、多額の契約料だけを懐に入れている。

 一方でモンスター患者は悪徳開業医に文句を言えば言いものを、わざわざ大病院の救急外来に押しかけてきては「診療拒否だ。法律違反だ」と受付職員や看護師を恫喝し、救命外来業務にも支障が出ている。新型コロナ以降、欲ボケ開業医とモンスター患者の影響で、医療現場はもうメチャクチャだ。

 今年7月以降、119番通報してもオペーレターになかなか繋がらない緊急事態が続いており、東京消防庁は9月11日に公式SNSで「【119番通報が大変混みあっています】119番は緊急通報です。問合せや相談等を119番通報すると本当に必要な緊急通報に対応できなくなる恐れがあります。不要不急の電話については最後までお話を聞かずに切断する場合があります」と呼びかけた。

 武見厚労相は9月17日のNHK「日曜討論」に出演して「医療関係団体の代弁者になることは毛頭考えていない」と発言している。

 年間数十万円の健康保険料を強制徴収されながら、熱が出ても日本医師会会員の開業医に診療拒否され、市販薬を買うしかないなら、健康保険制度などいらない。今となっては「悪平等」「健康な国民イジメ」でしかない健康保険制度をガラガラポンし、悪徳開業医に引導を渡せるのは、この制度を作った太郎氏の息子しかいないと思うのだが…。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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