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「エンドウ、誰?」低評価を覆した遠藤航はリバプールの救世主になった

 19-20年シーズン以来のプレミアリーグ優勝を狙うリバプール。チームの歯車として貴重な役割を果たしているのが、遠藤航だ。

 今季のリバプールは世代交代を敢行。ファビーニョ、フィルミーノ、ジェイムズ・ミルナー、ナビ・ケイタらベテランが退団し、代わってマック・アリスター、ゾボスライ、グラーヴェンベルヒといった25歳以下の若い選手を補強した。

 とりわけチームの顔であるファビーニョが抜けた、アンカーのポジション補強は急務だった。リバプールはブライトンでプレーするエクアドル代表の22歳カイセド獲得に動いた。移籍金1億1000万ポンド(約209億円)を用意したが、チェルシーとの争奪戦に敗れて急きょ、シュツットガルトの遠藤を移籍金1600万ポンド(約30億円)で獲得した。

 カイセドと遠藤ではあまりにも知名度の差があり、世論は「無名の30歳のベテランを獲ってどうするのか」「エンドウ、誰?」といった批判的な声が多かった。

 遠藤がリバプールに合流したのは、プレミアリーグが開幕した後であり、キャンプやプレシーズンマッチなどの準備期間はなかった。アンカーのポジションにはアルゼンチン代表のマック・アリスターが入り、遠藤はその控えとしてベンチスタート。何試合か途中出場したが、パッとしないプレーが続いていた。

 ではなぜ、リバプールは遠藤を獲得したのか。それにはヨング・シュマトケSDの存在が関係している。彼はブンデスリーガの各クラブで長らく補強責任者としての仕事をしており、遠藤のプレーに注目していた。ドイツ人であるクロップ監督も遠藤のプレーは確認済みで、リバプールのサッカーに合うと確信していたのだろう。

 リバプールのサッカーは現代サッカーに比べて、よりコンパクトさを求められる。だからアンカーに求められる守備は、待ち構えるのではなく、高い位置でボールを奪いに行くアグレッシブさ。後ろ向きの守備が苦手で前に強い遠藤は、リバプールにうってつけだった。

 リバプールは12月初旬、首位に立った途端、マック・アリスターが膝を負傷する。その危機を救ったのが遠藤だった。マック・アリスターに代わりアンカーで先発すると、チームは負けなし。優勝争いから脱落するかとみられたリバプールを、遠藤が救った。

 やっとの思いでポジションを獲得したかに見えたが、1月にはアジア杯で日本代表に招集される。そしてその遠藤と入れ替わるように、マック・アリスターがケガから復帰した。

 アジア杯終了後、チームに復帰した遠藤は、再びベンチに追いやられると思われた。しかしクロップ監督は、両選手を先発で起用した。マック・アリスターは元々、ブライトンでもインサイドセンターやトップ下のポジションでプレーし、アルゼンチン代表でも2列目でプレーすることが多く、攻撃力が魅力の選手。遠藤をアンカーに置くことで、マック・アリスターが1列前でプレーでき、その攻撃力を生かせるようになった。

 入団当時「エンドウ、誰?」と言っていた世論も、チェルシーで機能しないカイセドよりも、遠藤の獲得は大成功だったと言うようになった。

 30歳にして名門クラブへ挑戦した遠藤だが、今季限りでクロップ監督が退任するのは決定的。監督が代われば、先発は白紙に戻る可能性もある。遠藤の挑戦はまだまだ続きそうだ。

(渡辺達也)

1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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