社会

医師・帯津良一の健康放談「他人の顔色を見て生きる方がよいのです」(1)

20150129t1st

 私自身が実践し、患者さんにもお教えしている「攻めの養生」とは、常に自分を向上させていくことです。「向上させる」と聞くと何やら人格を向上させるなどという話に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。

 それは生命のエネルギーを高め続けるという意味なのです。

 それも難しいことではありません。滝に打たれるとか、何キロも走って体を鍛えるとか、苦しい修行をすることではないのです。酒でも、異性でも何でもいい、まずは何かに「ときめく」こと。それが生命のエネルギーを高めさせると私は考えています。

 こう聞くと、「そんなことができる人は特別な人なのでは?」と思う人も多いと思います。「自分はときめきを持てないのではないか」と考えている人も多くいることでしょう。ですが、今まで多くの患者さんを診てきて「ときめき」というものは誰にでも平等にあると私は感じています。たとえ死の間際にあっても、人はときめきを持っています。そういう方の「死」は本当にすがすがしいものです。

 では、どうして人は「ときめきを持てない」と考えるのでしょうか? それは「ときめく対象」がせっかく目の前にあっても、気がつかないからです。それじゃもったいない。気づくためには何が必要か? 私は「初々しい心」が不可欠だと思っています。初々しい心を保つためには何が必要なのかをお話ししましょう。

 先日、講演をした時、客席からこんな質問が出ました。

「平常心を築くにはどうしたらいいでしょうか?」

 私は「必要ありません」と答えました。オドオド、ビクビクとして生きたほうが、ときめきの感性が広がり高まるからです。それは決してみっともないことではなく、「ときめき」のアンテナ感度を上げているということではないでしょうか。他人の顔色を見て生きるくらいのほうが、ときめきを感じやすくなるのです。

 これを私に気づかせてくれたのは、作家の角田光代さんです。著書が大ヒットしている方なので、大家然としている人かと思っていました。ある雑誌の対談でお会いしてみたら、「名を成し財を築いた人がここまで初々しいのか」と思うぐらい、オドオドとしていたのですよ、実にいい感じに。私をうかがいながら、お話をなされる。アンテナを張っているのでいつもときめいている。生き生きとしておられます。

 そんなこともあって個人的には、大家になるのはあまりいいことではないと思っています。何歳になっても「ハッ!」「しまった!」という感じの人のほうが、見ている側も楽しいじゃないですか。かわいげもある。

 角田さんが備えているような初々しさというのは、若い人が初めて何かを経験する時の、興味津々ではあるけれど同時に警戒心も持っている、あのおっかなびっくりする感情のことです。「初々しい気持ち」は、謙虚さも兼ね備えているものです。

◆プロフィール 帯津良一(おびつ・りょういち) 医学博士。東大医学部卒、同大医学部第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、帯津三敬病院を設立。医の東西融合という新機軸をもとに治療に当たる。「人間」の総合医療である「ホリスティック医学」の第一人者。

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