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人間はミスを犯していいし、ミスを恐れてはいけない。謙虚な気持ちを持っていないと、そういう現実を見逃してしまいます。初々しい謙虚な気持ちを常に持ち続けていくことが、いい生き方を実現させ、いい「死」に向かっていくということなのです。
西洋医学では死は不可逆的反応で、死んだら終わりと考えます。「生」と「死」は分断されています。
一方で、日本人はアイバンクに登録をする際、片目のみ献眼登録をする例があります。死んでも見えなければ三途の川を渡れないという考えが根底にあります。つまり、日本人は「生」と「死」がつながっていると考えているのでしょう。荼毘に付すまでは魂が肉体にとどまっている、と考える人もいると思います。
私が考える「死」の概念とは、もう1つの世界に行くことです。「死」は終わりではなく、魂のふるさとである「虚空」への旅立ちだと私は捉えています。
死後の世界の有無は誰にもわかりません。なので科学的に死後の世界を考えるのは非常にナンセンスであるとも言えるでしょう。
ですが私は、死後の世界がないとつまらないなぁと思うんです。たかだか80年、90年で生涯を終えて、「あぁ、いい人生だった」というんじゃ、あまりにもつまらない。もう1つの世界に行ったら先に逝った人たちが待っていて、乾杯できる場所が存在すると考えるほうが楽しいじゃないですか。あると思って生きていたほうが、生き生きと生きられますし、死を恐れることもなくなります。
死後の世界があるかないかを考えるのは、生きている人の気持ちの持ちようなんです。
私が死後の世界があることを信じるのは、「虚空」に行ったら会いたい人が大勢いるからでもあります。
そのうちの一人が、20年来の知人です。共通の友人を介して、年に一度は呑む間柄でした。
彼は小さい会社をいくつか経営していた社長で、ある日、彼の会社の秘書さんから電話がありました。
「実は社長がCCU(冠動脈疾患集中治療室)に入っています」と。
もともと心臓が悪くて、時々病院に運ばれて、集中治療室に入っているのは知っていました。この時は主治医さんが、「帰れないかもしれない」と、本人と秘書さんに伝えられました。そうしたら本人が、「帯津先生をここに連れてきてくれ」と秘書さんに頼んだらしいんです。
クリニックに電話がかかってきたのが、開院間際。私はこれから仕事ですが、死ぬ人の頼みは切実ですから、私は病院に駆けつけました。集中治療室で彼は、全身管だらけで個室に寝ていました。
しかし、これがまたいい顔でね、ニコニコしているんですよ。自分が死ぬかもしれないっていう時に、穏やかに笑っているんです。
その時に言った彼の遺言が「あの世で会おう」と私に思わせた、実にいい内容だったんです。
◆プロフィール 帯津良一(おびつ・りょういち) 医学博士。東大医学部卒、同大医学部第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、帯津三敬病院を設立。医の東西融合という新機軸をもとに治療に当たる。「人間」の総合医療である「ホリスティック医学」の第一人者。
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