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Posted on 2025年02月01日 17:56

新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「武藤・全日本が目指したのは宝塚と劇団四季!?」

2025年02月01日 17:56

 新日本プロレスは2008年春の時点で、アントニオ猪木、武藤敬司&蝶野正洋&橋本真也の闘魂三銃士、天山広吉、小島聡、永田裕志、中西学らの第三世代を経て、棚橋弘至と中邑真輔の時代に移行した。

 一方、武藤敬司率いる全日本プロレスは、武藤が02年10月に社長に就任したことにより、ジャイアント馬場時代からのファン、武藤が連れてきた新日本系の新しいファンが同居している状況の中で新たな武藤・全日本を打ち出していかなければならなかった。

 馬場・全日本のキャッチコピーは「明るく楽しく激しいプロレス」だったが、武藤・全日本が目指したのは「明るく楽しく激しく、そして新しいプロレス」だ。

 武藤は〝外国人選手が充実している全日本〟のイメージを守りつつも、03年秋からスティーブ・ウイリアムスらの従来の外国人選手を一掃して新しい人材を投入。そこでヒットしたのがジャマール、ディーロ・ブラウン、ブキャナンらの外国人ユニットRO&Dである。ファンは言葉が通じない外国人選手に感情移入しにくいが、司令塔になったTAKAみちのくが選手たちのメッセージを伝えることで言葉の壁を乗り越えた。

 大会前のオープニングで、TAKAがRO&Dのメンバーを従えてのインフォメーションはRO&Dタイムとして人気を博し、当初はヒール軍団だったRO&Dが〝動けるデブ、空飛ぶデブ、みんなのデブ〟をキャッチフレーズにするジャマールを筆頭に、ベビーフェース的な人気者になった。

 そのRO&Dに対抗する形で05年春に登場したのが、TARU率いるヒール軍団のブードゥー・マーダーズ。

「最初は〝どこの馬の骨だか‥‥〟と思っていたけど、どの団体を見渡しても悪者っていねぇなと思っていたから、これは使えると思ったよ。彼らが来たことでプロレスの基本形のベビーVSヒールが全日本では成り立ったよね」(武藤)

 さらに新日本に比べて選手層が薄いと感じていた武藤は、04年に佐々木健介と中嶋勝彦の健介ファミリー、05年から曙、06年には鈴木みのるという個性的なフリー選手を積極的に起用。

 彼らの個性を最大限に生かしたことで、プロレス大賞では健介が04年MVP、中嶋は同年新人賞、06年は健介とのアジア・タッグ奪取が評価されて敢闘賞を受賞した。

 総合格闘技で芽が出なかった曙は、05年夏から全日本に参戦したことでプロレスに開眼し、同年の新人賞&武藤とのコンビで最優秀タッグ賞のダブル受賞。同じ05年にはRO&Dの司令塔として人気者になったTAKAが「プロレスの巧さはもちろんのこと、巧みなトークも技能」と評価されて技能賞に選ばれている。

 さらに06年には、三冠王者になった鈴木みのるがMVP。ブードゥーが最優秀タッグ賞を受賞した。

「全日本には俺以外に柱がなかった中で、選手たちには1試合目から全部テーマを持たせて試合させた。チケットを買って会場に入ってきた時点で、スクリーンが回ってドラマがスタートしているのが全日本のプロレス」という武藤のプロデュースは様々な面白さが詰まった「パッケージ・プロレス」と呼ばれた。

 さらに06年3.21後楽園のファン感謝デーで武藤&神奈月(武藤のモノマネ)VS小島&イジリー岡田(三沢光晴のモノマネ)というお笑い芸人を起用してのタッグマッチが大ウケしたことで、お笑い芸人を導入したタッグ王座のF‒1王座(Fはフェイク=ニセモノの意味)を新設。武藤&神奈月のW武藤が初代王者になり、原口あきまさ、ダチョウ倶楽部、ザ・たっち、アントニオ小猪木、はなわ、前田健、ユリオカ超特Q、ケンドーコバヤシ、長州小力、レイザーラモンRG、グラップラーたかしがF‒1に出場している。

 また08年2月15日には新宿FACEで、セクシー女優・夏目ナナのプロデュースによるプレイボーイチャンネルとのコラボ興行を開催。セクシーアイドルが選手のセコンドに付いた。

 こうしたことが許されるのも、武藤がファンの信頼を勝ち得ているからこそ。

「そのリングのパッケージに必要だったら、犬でも女でも何でも上げるからね。プロレスってオリンピックもないし、世界選手権もないし、目指す方向は宝塚であり、劇団四季じゃねぇかって思っているよ」とは、当時の武藤の言葉だ。

 リング上の本筋では、ジャンボ鶴田と同じ中央大学レスリング部出身で〝ネクスト・ジャンボ〟として04年10月に鳴り物入りでデビューした諏訪魔が期待通りに成長した。

 06年1月にブードゥー入りしてヒールに転向したものの、08年2月に正規軍に復帰して4月の「チャンピオン・カーニバル」に出場。3月に新日本の「ニュージャパンカップ」に優勝して2大メジャーの春の祭典制覇を狙って参戦した、棚橋弘至を優勝決定戦で撃破して初優勝すると、4月29日の愛知県体育館で健介から三冠王座を奪取。キャリア3年半にして全日本の頂点に立ったのである。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

写真・ 山内猛

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