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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「旗揚げ53周年!両団体ともに新時代構築へ(連載最終回)」

 今年2025年3月6日の大田区総合体育館大会で、新日本プロレスは旗揚げ53周年を迎えた。全日本プロレスも、10月22日には53周年を迎える。

 振り返ると日本のプロレス界は、53年前の72年にアントニオ猪木が新日本、ジャイアント馬場が全日本を旗揚げしてから、馬場と猪木のBIの対立によって歴史が作られてきた。

 猪木が馬場に執拗に対戦を迫り、日本選手権開催を提唱すれば、馬場は「俺の敵は世界」とばかりに日本人初のNWA世界ヘビー級王者になった。日本選手権開催を断念した猪木は異種格闘技路線に走り、プロボクシングの現役世界ヘビー級王者モハメド・アリとの世紀のスーパーファイトを実現させて、世界中に知られる存在になった。

 81年には、トップ外国人選手の引き抜き合戦が勃発。新日本がアブドーラ・ザ・ブッチャーを引き抜けば、全日本はその報復としてタイガー・ジェット・シンとスタン・ハンセンを引き抜き、結果として猪木VSブッチャー、馬場VSシン、ハンセンなど、考えられない対決が実現した。

 馬場が直接手を染めたわけではないが、84年9月には人気絶頂だった長州力らの維新軍団をはじめ、13選手が新日本を退団して、全日本と提携するジャパン・プロレスに移籍。85年から長州らは全日本を主戦場にして長州とジャンボ鶴田、天龍源一郎が戦うように。

 存亡の危機に立たされた新日本は、前田日明らのUWFとの対抗戦をスタートさせ、さらにブルーザー・ブロディを引き抜いて対抗。馬場と猪木の企業戦争はプロレス界を活性化させた。

 節目となったのは、89年に猪木が参議院議員になったこと。それに伴い猪木は新日本社長の座を坂口征二に譲り、馬場が坂口を信用していたこともあって、90年から両団体は協調路線にシフト。同年春に異業種のメガネスーパーが莫大な資金で新団体SWSを設立して参入してきた時には、共同戦線を張って防衛した。

 2004年に武藤敬司、小島聡、ケンドー・カシンが全日本に移籍した時には両団体に緊張が走ったものの、すぐに関係は修復されて、その後も些細なトラブルはあったが、BI対立時代のような仁義なき企業戦争には至っていない。

 半世紀以上もの時間の流れの中で、両団体は大きく変わった。馬場も猪木も鬼籍に入り、新日本は05年11月に株式会社ユークスに買収され、12年1月にはユークスから株式会社ブシロードに親会社が変わった。

 全日本は、屋号こそ「全日本プロレス」のままだが、馬場が作った全日本プロ・レスリング株式会社ではなく、株式会社全日本プロレスリングシステムズを経て、現在はオールジャパン・プロレスリング株式会社が運営している。

 当然、リング上も大きく様変わりした。馬場と猪木がしのぎを削っていた昭和黄金期から、鶴田、藤波辰爾、長州、天龍“俺たちの時代”、新日本は武藤、蝶野正洋、橋本真也の闘魂三銃士、全日本は三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明の四天王‥‥と歴史が紡がれてきたが、もはや三銃士も四天王もリングを降りている。

 今、新日本も全日本も新しい時代に向けての過渡期を迎えている。新日本は永田裕志、小島聡、中西学らの第三世代を経て、90年代終盤からゼロ年代初頭の暗黒期を棚橋弘至、中邑真輔という猪木時代を知らない新世代によって抜け出し、12年からのブシロード新体制を“レインメーカー”オカダ・カズチカが牽引、内藤哲也という新たなヒーローも生まれて新日本1強時代を確立した。

 だが昨年1月にオカダ、トップ外国人として活躍したウィル・オスプレイの2人が米国AEWに移籍。カリスマとなった内藤は今年の5.4福岡を最後に退団することが判明した。23年12月に社長に就任した棚橋は、来年1.4東京ドームでの引退が決まっている。

 相次いで柱が抜ける中、新日本の急務は新たなエースを確立すること。現在のIWGP世界ヘビー級王者は今年でキャリア22年、45歳の後藤洋央紀だが、先を見据えれば、若いスターが必要だ。エース候補はGLOBALヘビー級王者の辻陽太、海野翔太、上村優也、成田蓮。さらにDDT&AEW&新日本トリプル所属のNEVER無差別級王者KONOSUKE TAKESHITAがいる。

 全日本は昨年3月にキャリア1年半、24歳の安齊勇馬が三冠王者になったことで時代がゴロッと動いた。

 ミヤギテレビの食レポで世間一般でも人気に火がついた斉藤ジュン&レイの斉藤ブラザーズ、安齊を中心とした新世代ユニットのエルピーダによって若いファンが急増。13年に全日本に移籍してきた、36歳の宮原健斗が一番の古株になるほど若返った。

 両団体ともに独自の新時代構築に傾注している時期だけに接点はなくなっているが、リング上で火花を散らす時が必ず来るはず。それが新日本プロレスと全日本プロレスの宿命なのだ。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

写真・山内猛

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