東京オリンピック柔道男子100キロ級金メダリストのウルフ・アロンが新日本プロレスに入団するという電撃発表には、社長の棚橋弘至も出席したが、一緒に並んでもウルフの体格のよさは、すでにヘビー級そのものだった。
翌日のNHK「おはよう日本」や民放ニュース番組でも取り上げられるほど大反響を起こしたが、プロレス界に訪れた久しぶりの朗報に、新日ファンは大喜びの一方で、
「わざわざ6月23日に発表する必要があったのか」
と不満をブチまける向きもある。
というのも、その日の夜に団体は「NEW JAPAN SOUL 2025」の後楽園大会を開催。月曜日にもかかわらず、1110人の観客が集まったお目当ては、真夏の最強戦士決定戦「G1クライマックス」に出場できる残り4枠を争う「出場者決定戦」だった。
本選出場を目指しているタイチは自身のXで、
〈新日本にとって とても良いニュースだったのは間違いない だけど 何で今日なんだ? 大人の事情とかあるかもしれないけど 今日じゃなくても良かったろ 俺も他の選手も死ぬ気でG1掴みに行ってんだ 今日は俺たちが話題の主役じゃないのか? 考えてほしかった 悲しいし悔しい 全部吹っ飛ばしてやるよ〉
試合前に揺れる心境を、そう吐露していたのである。
6.15大阪城ホール大会で、G1クライマックス出場選手20名のうち、決定した16名を発表。残り4名は6.23後楽園大会と、7.4東京武道館大会で「出場者決定戦」を行うとして、大々的に盛り上げていた。
「それなのにウルフの入団発表とまるかぶりしたため、後楽園大会の結果そっちのけで、話題はウルフ一色になりました。出場者ががっかりするのは納得で、せっかくG1がクローズアップされるきっかけを、自ら潰してしまいましたね」(格闘技ライター)
水を差されても出場した選手たちが激アツの攻防でファンを沸かせてくれたのが、せめてもの救いだったか。
(風吹啓太)